お客様事例!開業医の先生の節税対策を実行した事例
※最終更新日:2020年8月7日
こんにちは。
「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。
私がこの仕事を始めた約20年前から変わらずご要望の多い「節税対策」。
「税金の負担が重すぎるよ」
「顧問税理士から何もアドバイスがない」
「節税対策はしっかりしたいけど、脱税は絶対にしたくない」
こうしたご意見をよくお聞きします。
「節税対策」と言っても、その方法はさまざまです。
そのさまざまな方法の中から、経営状態や資金繰り、経営方針、先生の性格や未来予想まで考慮してベストな方法を一緒に選んでいくことが重要です。
選択する方法を誤ると逆効果になります。
そこで今回は、実際の開業医であるお客様事例の中から「節税対策」を実行した事例をご紹介します!
(今回ご紹介する事例に出てくる節税対策は、医療法人でも適用可能な対策が多く出てきますので、医療法人の方も参考になると思います。)
※この記事は次の人にオススメです。
・「医療経営 中村税理士事務所」のお客様事例やお客様の声が気になる人
・他の医院がどのような節税対策をしているのか、気になる人
前提
・東京都(歯科:クリニック)
・売上2.5億円
・事業所得1.3億円(所得税45%+住民税10%)
・毎年多額の税金に苦しんでいるが、医療法人にはまだしたくないご意向
・親族が代表を務めるMS法人あり(法人の株式は院長先生が所有)
対策
先生に各種の節税対策をご提示し、メリット・デメリットをご説明。
「無理なく適用できるものを中心に」というご意向を受け、今年は下記の16種類の節税対策を一緒に実行していくことになりました。
(1)税額控除系
1.所得拡大促進税制
順調に増収増患となっていることもあり、人手が増えて、人件費が増加しています。
「利益を職員さんへ還元したい」という先生のお考えもあり、賞与の支給額も自然な上昇局面にありました。
そのため、職員さんへの人件費が前年に比べて増えている場合に使えるこの制度をオススメしました。
この制度は、増加した人件費の15%をその年分の所得税から控除することができます。
さらに、研修費が前年よりも10%以上増加していることで、増加した人件費の25%を控除できる上乗せ措置もあります。
この時点で、研修費が10%以上は増えていませんでした。
そのため、急遽、下記の研修を組み込むことで上乗せ要件を目指しました。その結果、増加した人件費の25%の上乗せ控除ができるようになりました。
人件費が増加傾向にある医療機関には、オススメの制度です。
このブログでも解説していますので、参考にしてください。
併せて確認!Q5「増え続ける人件費に何か良い対策はないでしょうか?(所得拡大促進税制)」
2.設備投資減税(中小企業経営強化税制)
今年の早い段階から電子カルテの買い替えを検討していました。
そのため、購入前に中小企業経営強化税制を使って、全額経費で落とすことをご提案していました。
その案を年内で実行することにしました。
これは、購入前に手続きをすることが原則になります。
先生と月々打ち合わせをしていたからこそ、購入前に事前に動くことができ、問題なく手続きを取ることができました。
こちらの対策も過去のブログで解説していますので、参考にしてください。
併せて確認!Q86「病院やクリニックで設備投資に関する節税対策を使う!〜中小企業経営強化税制〜」
3.寄附金の税額控除(特定寄附金)
寄附をすることで、寄附先によっては税額控除を受けることができます。
今回の寄附先は、もともと年末にかけて募集のあった「某特定公益財団法人」。
こちらは「所得控除」と「税額控除」の有利な方を選択することができます。
ほとんどの場合、「税額控除」が有利になるため「税額控除」を選んで頂ければ良いのですが、この事例の場合は税額控除40%に対して、所得税率45%のため、所得控除を選択しました。
節税のために寄付したということではありませんが、結果として寄附することもでき、節税にもなりました。
併せて確認!Q95「個人開業医の寄附は少し違う!寄附で節税する」
(2)必要経費算入系
4.少額減価償却資産の駆け込み取得
抜群の知名度を誇る「30万円まで1度で経費にできる」というものです。
お金は出ていきますので、不要な物を購入する必要はありませんが、必要な物であれば駆け込み効果はしっかりあります。
今年はノートPC(約20万円)を購入しました。
反対に、30万円を超える設備投資の場合、「減価償却」になりますので、今年全額を経費にすることはできません。
耐用年数に応じて経費化していくことになる上、購入年については「事業で使い始めた月から期末までの月数分」しか経費になりません。
駆け込み効果はほとんどありません。ご注意ください。
併せて確認!Q84「病院やクリニックの設備投資に関する節税対策〜基本〜」
5.中古事業用車の購入
自動車の買い替えも行いました。もともと買い替えを検討されていたのですが、「良いタイミング」ということで購入されました。
もちろん、車は30万円以上しますので、上記4同様、「減価償却」することになりますので「駆け込み効果」はないのですが、中古車の場合は、耐用年数の計算が特有の方法であるため、購入年であっても高い節税効果が見込めます。
個人的には、節税第一で中古車を購入するのではなく、新車が欲しいのであれば新車で良いと思いますが、今回は中古車で良い物があったそうで、中古車の購入となりました。
併せて確認!Q89「節税と資金繰りのために、中古を検討する必要はあるのか?」
6.内装の修繕
先生の中で以前より、院内の壁紙を張り替えたいというご意向がありました。
こちらは20万円以下であれば、問題なく修繕費なのですが、約80万円になりました。
ただし、あくまでも「原状復旧」という範囲で捉え、修繕費として全額経費計上しました。
以前から綺麗な医院ではあったのですが、院内の雰囲気もより良くなり、患者様やスタッフの評判も良いようです。
併せて確認!Q92「修繕を節税対策とする場合の気をつけるべきポイントとは」
7.接遇研修の実施
もともと、職員様を含めて経営会議を開催し、「目標数字」を設定し、職員様にも「経営者意識」を求める先生でした。
そこで、職員様の接遇研修を実施しました。職員様自身も新たな発見があり、スキルアップを実感できたようで大変好評でした。
節税という観点からも通常の経費になるばかりでなく、上記1の所得拡大促進税制の上乗せ要件も満たすことができ、ダブルで高い効果を得ることができました。
併せて確認!Q96「人材から人材へ!職員のスキルアップも節税に」
8.固定資産の除却
期末に固定資産台帳に載っている資産が実在し、実際に使用しているかを確認をしています。
これにより、廃棄した物や使わなくなった物は経費に落とすことができます。
償却資産税の節税にもなり、一石二鳥です。
併せて確認!Q88「償却資産税の節税対策に資産の整理を!」
9.貸倒損失の計上
回収可能性のない未収金を経費に落としました。これを「貸倒損失」と言います。
保険診療は貸し倒れになりませんし、自由診療収入はカードが多い医院であるため、患者様の窓口未収金が中心となりました。
そのため、金額的には大きな経費にはなりませんでしたが、お金をしっかり回収できていることを意味しますので、医院経営という意味では健全で良いことです。
併せて確認!Q93「大敵!?窓口未収金を節税で取り戻す!〜貸し倒れ〜」
10.自宅1室を事業用倉庫に転用
従来より、院長室が狭く、物が溢れた印象でした。
そこで、ご自宅の一室を「事業用倉庫兼院長室」として事業転用しました。
これにより、ご自宅の減価償却費や院長室で使う物を経費化することができます。
先生としても書斎や研究室として使うことができ、大事な空間になっているそうです。
ただし、税務調査時には、使用実態を現地訪問して確認されることがありますので、きちんとした実態が必要です。
11.代診のドクターの枠を増やす
以前は週2回、代診のドクターが助っ人として勤務していました。
院長先生が自由診療を中心に、代診の先生が保険診療を中心に対応していました。
そこで、代診の先生の枠を増やすことにしました。
もちろん、患者様は「院長先生に診てほしい」と思いますので、無理のない範囲で担当して頂いています。
これにより、先生の負担が減少し、「時間をお金で買う」ことができ、生まれた時間で休養を取ったり、勉強をしているそうです。
12.就業規則のメンテナンス
医療機関の現場でも、働き方改革の影響はどんどん大きくなっています。
その際に、ポイントになるのが「就業規則」です。
もともと就業規則はありましたが、メンテナンスしておらず、かなり古いままの状態でした。
そこで、将来のリスクを減らすための投資ということで社労士さんに相談の上、就業規則をメンテナンスし、その作成報酬を経費で落としました。
(3)その他
税金を直接減らす税額控除や自院内の経費化以外の対策もあります。
13.MS法人との取引増加
従来より親族を代表取締役、院長先生を株主としたMS法人がありました。
このMS法人との取引を増やすことにしました。
具体的には、備品の賃貸です。
診療材料等の売買や窓口事務の委託等、大きな金額が動く取引は既に契約済みでしたので、比較的小さな取引にはなりましたが、MS法人との取引範囲を広げることにしました。
併せて確認!Q98「MS法人は節税に使えるのか?」
14.idecoに加入
idecoを用いての資産運用については、過去にこのブログでも解説していますので、そちらをご参照ください。
経営者というのは非常に激務ですので、どうしても目先の患者様や職員様のことで頭がいっぱいになりがちです。
月に1度で良いので、手を止め、先生ご自身の将来について考える時間が必要です。
その中でこうしたiDecoなどを活用した資産運用をしていきましょう。
※この記事公開日現在では、コロナウィルスの影響で投資資産にかなりのダメージが出ていますのでご注意ください。
併せて確認!「Q36 医師はどのように資産運用したら良いのか?〜イデコ編〜」
15.ふるさと納税を限度額まで実施
個人的には、ふるさと納税は節税対策と思っていません。
税金が減るのは事実ですが、ほぼ同額が寄附としてお金が出ていってしまうためです。
とは言え、ご存知の通り、「特産品」が魅力的ですよね。
院長先生は、職員様の休憩時間のおやつにしているそうです。
楽しみながら「節税(っぽいこと)」ができるので、オススメはしています。
ただし、寄附には限度額があり、そこを超えると本当にお金が出ていくだけの「寄附」という意味になります。
節税効果を考えるのであれば、住民税の限度額は意識しておきましょう。
この事例においても、年中何度か限度額を試算し、年度末にも限度額を再計算し、その限度額いっぱいまでふるさと納税を実施しました。
16.医療費の適用漏れの確認
意外と適用範囲が広いのが、医療費控除です。
特に多い誤解が、「自由診療は適用できない」というものです。
確かに歯や肌を綺麗にする等の審美系の費用はダメですが、医療費控除に「保険↔︎自費」の区分はありません。
そして、ご自身のみならず、同居(or仕送り)している親族でもOKです。
事業主ですので健康第一が何よりですが、今年の医療費の振り返りは必ずしています。
この事例でも高額な自由診療となる目の治療をされていましたが、対象となるものでしたので医療費控除の適用を受けることができました。
結果
この16種類の節税対策を実行したことにより、税金は大きく減少しました。
大事なことは、節税のためだけに行動しないということです。
修繕をして綺麗な医院になれば、患者様や職員様が気持ちよく過ごすことができます。
就業規則をメンテナンスすれば、医院の将来のリスクを減らすことができます。
iDecoに加入すれば、将来の年金となり、引退後の生活を支えてくれます。
すべて、先生にとって価値のあることです。
しかも、「節税になる」ということです。
この順番を間違えてはいけません。
勤務税理士時代には、「節税」ばかりを求める先生も多く担当させて頂きました。
最初は順調なのですが、「なんかお金溜まってない気がする」と仰ることが多々ありました。
お金を使って節税しているわけですから、当然です。
支払先が、業者か国かの違いです。
「節税しながらも、お金はしっかり残すというバランス」そして、残ったお金は「ストレスない範囲で上手に運用する(=お金に働いてもらう)」
このお金の使い方が大切です。
私自身も事業主として、この考え方を大切にしています。
院長先生にもご理解いただき、大変ご満足頂くことができた事例です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
節税対策はたくさんあります。これらは、各々一長一短でもあります。
お客様に応じた最適策をご提案し、お喜び頂いた事例をご紹介致しました。
「お客様個々に応じた最適策をこちらから提案する」
これを1番大切にしています。