医療法人による生命保険は養老保険が良いのか?Q162

 

こんにちは。

「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。

名義変更プランによるメリットにメスが入るなど、生命保険の改正は止まることがありません。

保険会社とのイタチごっことも言えるでしょう。

前提条件はたくさんありますが、変更する際、「解約返戻金」ではなく「資産計上額」で変更するというものです。

この改正により名義変更プランの意図したメリットを享受することができなくなった人もいるそうです。

その影響により再び人気が出始めているのが、「養老保険」です。

そこで今回は今、法人での「養老保険」を検討されている先生や今後検討される先生向けに、注意点をメインに解説していきます。

※この記事は次の人にオススメです

・医療法人による生命保険について、養老保険の活用を検討している人

医療法人で加入する養老保険

簡単に前提を押さえておきますが、養老保険とは「死亡」でも「生存(=満期)」でも保険金が出る保険となります。

実務上、最も多いのがこのパターンです。

①契約者:法人

②被保険者:役員及び従業員

③死亡保険金の受取人:被保険者の遺族

④生存保険金の受取人:法人

そして、保険料の半分が損金(経費)になることになります。

冒頭の改正の影響を受けた定期保険でも、4割損金の商品が多く出ていますので、損金の割合はそれ程変わりませんが、解約返戻率が90〜95%と高いのが特徴です。

実務上の注意点

何が問題かと言いますと、被保険者が役員及び従業員様になるわけですが、全員加入が原則となります。(普遍的加入)

ただし、「職種・年齢・勤続年数等」の合理的な基準を設けて加入することは、上記の普遍的加入に該当するとされています。

ところが、この基準設定が甘く、税務調査で否認されている事例が多く報告されています。

「主任以上」という基準で否認された事例もあります。(誰もが主任になれるわけではないから)

同様に保険料についても、合理的な金額格差があることは認められますが、例えば、役員だけ何十倍も高い保険料で良いというわけではありません。(合理的な格差といえない)

過去の判例等によると、保険料の格差は最大でも4〜5倍が限度だと思いますので、ご注意ください。

慎重に判断しましょう。

看護師など高い離職率も考慮

医療機関特有の論点として、看護師などの離職率が高いことが挙げられます。

早期に退職されることで解約返戻率が思いのほか、上がらないこともあります。

また、原則全員加入ですから、当然、保険料も高額になりがちです。

法人の資金や利益に対して、高額な生命保険に加入している医療機関は意外と多いものです。

自院の資金繰りを圧迫することがないような金額設定にしましょう。

まとめ

今回は注意点を中心に解説してきましたが、本来、養老保険は魅力のあるものだと思います。

普遍的加入や資金繰りに注意しながら、しっかりプランニングしてもらってください。

生命保険への上手な加入は、医療法人の経営にとって大きな効果をもたらすものだと思います。