医療法人のM&A、その売却価格はどう決めるのかQ135
こんにちは。
「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。
近年、M&Aについてのご相談が増えてきました。
「一体、いくらで売れるのかな?」
このご相談をとても多く頂きます。
それによって、将来のお金の計画も大きく変わってくるので、当然、気になるところです。
そこで今回は金額算定方法の一つである「純資産価額を基本とした方法」について解説していきます。
ぜひ、お手元に直近の「貸借対照表」をお持ちになりながらご覧ください。
きっと、自院の参考価格が分かると思います。
※この記事は次の人にオススメです。
・自院を売却する場合の価格の見込みを知りたい人
売却価格は納得できれば良い
親族等は別ですが、基本的に第三者への売却価格は当事者間で合意した価格であれば、税務上も問題ありません。
そのため、いくらを提示するかという基準が必要になってきます。
各種の難しい算定方法も存在しますが、こうした難しい方法は上場企業等への適用が目立ち、中小病院や医療法人である診療所には、実務上あまり適用しません。
また、医療特有の方法としてレセプト枚数等を基準に算定する方法もありますが、患者数の大小を評価に盛り込めるものの、その他の重要な財務状態を評価できないために、ベストな方法とも言い切れません。
そこで、実務上多いのが、「純資産価額を基準とした方法」です。
「仲介会社方式」と呼ばれることもあります。
シンプルに考えて、下記(1)+(2)の合計金額とします。
(1)時価純資産
(2)正常医業利益の3年分(または5年分)
それでは具体的にどういうことか、個別に見ていきましょう。
時価純資産とは
時価純資産とは、決算で作った貸借対照表(これは簿価と言います)を元に、その金額をすべて時価に修正したものを言います。
例えば、先祖代々の土地で1円として貸借対照表の計上されていたとしても、今の価格では1億円というケースでは、1億円として計上します。
他にも、保険積立金も支払った保険料の一部(または全部)が貸借対照表に計上されていると思いますが、今解約したら手にすることができる解約返戻金相当額に修正します。
反対に、預金残高や借入金などのように、貸借対照表残高と時価が変わらないものも存在します。
こうしていわゆる「含み益」や「含み損」を反映します。
他にも、買収後に資産の移動が予定されているものについても、その移動の予定も反映します。
(例:事業用の車を理事長先生が個人で買い取るなど)
また、未払残業代などが存在すれば、それも評価に反映し、実態の貸借対照表に修正していきます。
正常医業利益とは
損益計算書の医業利益を元に、臨時的な収益・費用を評価に反映します。
さらに、上記時価純資産同様、買収後の損益変動が予定されていれば、その変動の予定も反映します。
(例:取引の中止や退任する役員への報酬など)
これを営業権と考えますが、営業権として設定することを都道府県が認めないこともありますので、事前の確認が必要です。
契約書の文言など、形式的な基準で引っかかることもありますので要注意です。
この正常医業利益と上記時価純資産を計算は、デューデリジェンスの結果に基づき行います。
まとめ
この「時価純資産を基準とする方法」は貸借対照表と損益計算書を起点とするため、分かりやすいというメリットがあります。
必ずしも、この方法で算定する必要があるわけではありませんが、実務上、よく採用される方法です。
ぜひ一度、専門家に相談の上、先生の医院の「売却価格」を試算してみてください。
そして、その入ってくる売却価格をどうするのか。
その後の相続財産になりますので、トータルでのプランニングをご相談ください。
以前は「乗っ取り」のようなイメージも多かったM&Aも、今後はどんどん身近なものになっていきます。
まずは「売却価格の試算」からご準備されてはいかがでしょうか。
お気軽にご相談ください!
※関連記事はこちら
M&Aについては、過去のブログでも別角度から解説していますので、こちらも参考にご覧ください。
・Q 127「医療法人のM&Aとは(持分ありと持分なし)」
M&Aの全体像についてはこちらがオススメです。
・Q 134「将来のM&Aについて、今知っておくべきこととは?」