相続税の計算と税務調査の重要ポイントはここだ!

 

こんにちは。

「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。

「相続税の計算って、どうやるの」

「相続税の計算方法で、重要なポイントって何だろう」

こうしたご相談をいただくことがあります。

大事なことは相続税の計算をしていく過程の中に、相続税の節税につながる重要なポイントがあるということです。

そこで今回は、相続税を計算方法の中から、重要なポイントを解説していきたいと思います。

※今回の記事は次の人にオススメです。

相続税の重要な計算方法やポイントを知りたい人

相続税の節税をしたい人

相続税の税務調査の対策を知りたい人

相続人の相続分はどれくらいか

相続に関する紛争案件の約75%は、遺産総額で5,000万円以下の案件と言われています。

つまり、相続財産が多くて揉めるケースよりも、少ないがゆえに揉めるケースがほとんどだということです。

そこで大事になってくるのが、相続人の相続分の把握になります。

まずは、法定相続分を見ていきましょう。

(1)配偶者と子

1/2ずつになります。

子が既に死亡している場合には、孫へと相続されていきます。(代襲相続人

(2)配偶者と直系尊属(親)

配偶者が2/3、直系尊属が1/3となります。

(3)配偶者と兄弟姉妹

配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4となります。

兄弟姉妹が既に死亡している場合には、その子が代襲相続人となりますが、

さらに下の代に相続される再代襲はありません。

(4)そのほか

①半血兄弟姉妹

父母の一方のみを同じくする半血兄弟姉妹の場合は、全血兄弟姉妹のさらに1/2となります。

②非嫡出子

嫡出子と相続分に変わりはありません。

兄弟姉妹には遺留分はない

ここまで法定相続分を見てきましたが、これは法律で定められた割合であり、必ずしも強制されるものではありません。

被相続人の意思が優先され、相続人の合意が得られれば問題ありません。

ただし、すべてが被相続人の思い通りでは、不当な扱いを受けてしまう相続人も出てきてしまいます。

それが、「遺留分」です。

遺留分とは、相続財産のうち一定割合を相続人に留保する制度です。

すべてを被相続人の意思で決めることはできません。

この遺留分は相続人の権利であるため遺言によっても、この遺留分を侵害することはできません。

(1)直系尊属のみ・・・1/3

(2)上記以外・・・1/2

例えば、配偶者と子供の場合には1/2が遺留分となり、そのうち、1/2を配偶者が、残りの1/2を子供たちの遺留分となります。

遺贈は包括遺贈にしない

また、被相続人の意思で財産を分与したいときに使う制度が、「遺言」です。

遺言により財産を無償で与えることを「遺贈」といい、死に起因するため相続税の対象になります。

2種類ある遺贈を見ていきましょう。

(1)特定遺贈

「土地・建物は長男、預金は次男」などというように、特定の財産を遺贈することいいます。

(2)包括遺贈

「長男に財産の1/3を与える」などというように、財産を特定しない遺贈をいいます。

出資持分や土地など本来分けない方が良いものまで、分けてしまうことになるので揉める原因になる可能性があります。

具体的な分割は、相続人と遺産分割協議を行う必要があります。

相続税の納税義務者はとても広い

そもそもの話として、相続税の納税義務があるのは誰でしょうか?

最近では、海外に資産を意識的に持たれる先生が増えてきています。

海外にある財産は相続税の課税対象になるでしょうか?

また、ご自身のお子様などの相続人に中に、海外で生活をしている人がいるという先生もいらっしゃるかと思います。

もしくは、ご両親が海外生活をしている先生もいらっしゃるかと思います。

こうした海外で生活している方に対する相続税はどうなるのでしょうか?

これらの場合、相続税がかからない気がしますが、相続税の納税義務者は大変広いものになっています。

相続税の課税が国内財産に限定される「制限納税義務者」の要件を確認していきましょう。

(1)被相続人国内に住所なし(5年超国内に住所なし)+相続人も国内に住所なし(5年超国内に住所なしまたは日本国籍なし)

(2)被相続人国内に住所なし(5年以内に住所あり)+相続人も国内に住所なし(日本国籍なし)

この制限納税義務者に該当して、国内財産が何もない場合には相続税は課税されませんが、医院経営をされている先生方にとっては該当しないケースかと思います。

制限納税義務者以外は、国内・国外問わず全財産課税となります。

「国内に住所があるかどうか」が判定の第一歩です。

被相続人が国内に住所があれば、相続人の住所の有無は関係なく全財産が課税対象になりますので、注意が必要です。

相続開始前3年以内の加算を外す

「相続税対策として毎年贈与をしていても、相続直前3年以内は意味がない」

ご存知の先生も多い制度です。

相続または遺贈により財産を取得した者が相続開始前3年以内に被相続人から贈与された財産については、相続税の課税価格に加算されます。

つまり、贈与はなかったものとして、相続税の計算がされますので、かけ込みでの相続税対策は意味がないことになります。

ここでのポイントは3つです。

(1)相続または遺贈により財産を取得しなかった者は加算の対象にはなりません。

3年以内であっても生前贈与の効果は維持できますが、2割加算(※下段)に該当するケースが多いので注意が必要です。

(2)3年以内とは相続開始日からさかのぼって3年目の応答日をいいます。

例えば、2020年5月1日であれば、2017年5月1日以降が加算期間となります。

(3)配偶者控除の適用を受けて財産を取得した場合は、相続財産に加算する必要はありません。

ただし、2,000万円を超えた金額については、相続財産に加算する必要があります。

配偶者控除については、こちらの記事をご参考ください。

Q 110 医師の相続税を節税!短期間で効果の出る相続税対策とは?

2割加算に要注意

相続または遺贈により財産を取得した者が、被相続人の一親族の血族代襲相続人である直系卑属及び配偶者以外の相続人である場合には、その相続税は2割加算するものです。

具体例で見ていきましょう。

(1)2割加算にならない人

イ:配偶者

ロ:一親等の血族(父・母・子供)

ハ:代襲相続人である直系卑属(子が死亡している場合の孫)

(2)2割加算の対象者

イ:兄弟姉妹(その代襲相続人を含む)

ロ:孫養子

ハ:法定相続人以外の受遺者

実務上多いケースは、孫に相続するケースです。

子供が死亡し代襲されている場合を除き、2割加算となりますので覚えておきましょう。

税務調査の指摘が多いのは

相続税の税務調査を気にされている方も多いと思います。

各種のデータを見ながら、傾向と対策を考えていきましょう。

法人税や所得税とはかなり傾向が違います。

(1)調査割合

約30%が調査となります。かなり高い確率です。

課税価格別に見ると、3億円超の申告はほぼ全件調査対象になります。

(2)申告漏れ割合

調査となったうち、約80%が申告漏れを指摘されています。

これも相当高い割合です。

(3)申告漏れ価格と追徴税額

申告漏れの平均は約300万円で、その追徴税額の平均は約50万円となっています。

(4)申告漏れの多い財産

長年の傾向として、現金預金の申告漏れが目立ちます。

年度によっても若干異なりますが、現金預金が約35%を占めています。

第2位の有価証券も含めると約50%となり、相続税の税務調査は金融資産が中心であるといえます。

具体的には、被相続人の名義ではないが、実質的に被相続人のものである「名義預金」課税が多いと思います。

(5)傾向

近年特に「富裕層」狙いの調査が多くなっています。

そして、「海外案件」も多くなっています。富裕層が海外に資産を持つケースが増えてきており、税務調査として重点的に見られています。実際、調査件数も年々増加しています。

3億円以上の財産がある場合に提出する「財産債務調書」、5000万円を超える財産がある場合に提出する「国外財産調書」といった納税者側からの資料だけでなく、国税庁の「KSKデータ」、「租税条約による情報交換」、「国外送金調書」など、相続税の税務調査のもとになる資料・データは確実に増えてきていることを理解しなければなりません。

(6)対策

申告漏れ割合80%というデータから分かるように、相続税の税務調査がきた時点で、既に何らかの情報を掴まれている可能性が高いのです。

つまり、税務調査の当日対応ではない部分で結果が見えているのが、相続税の税務調査といえます。

上記4にもあるように、現金預金の申告漏れは簡単に発覚します。

現金預金を相続税申告から外すことで、節税しようとしてはいけません。(脱税です。)

まずは、この現金預金の申告漏れを注意した上で、相続税対策をしっかりとることが大切です。

相続税対策については、下記の記事でも解説していますのでご参考にしてください。

短期間で成果の出る節税対策はこちら

Q 110 医師の相続税を節税!短期間で効果の出る相続税対策とは?

 

借入金をして不動産投資をする節税対策はこちら

Q55 医師の節税対策〜借金しての不動産投資の落とし穴とは?

 

実際に節税した事例はこちら

税理士がお客様と一緒に考える3つの相続対策の事例

名義預金と言われないためには

税務調査対策として、「名義預金」も注意しなければなりません。

被相続人の名義でなく、例えば子供や孫名義の預金であっても、実質的に被相続人の預金であると認定されてしまうと、相続財産に加算されることになります。

これを税務調査で指摘されると、修正申告となります。

それでは、「名義預金」と認定されないようにするにはどうしたら良いのでしょうか?

(1)預金通帳等の保管者

預金通帳を保管していることは、実質的にその預金の所有者であることを印象付けます。

(2)印鑑の保管者

預金口座を開設する際、もしくは、閉鎖する際に印鑑(届出印)が必要です。

ということは、その印鑑の保管者が実質的にその預金の所有者であることを印象付けます。

(3)手続き担当者

定期預金の満期時や預貯金の設定や解約した手続きをした人は誰でしょうか。

その手続きをしている人が、その預金の所有者であることを印象付けます。

 

こうした各種の判断要因によって、名義預金認定がなされます。

贈与契約書を作成したり、贈与税申告をしたという事実は、名義預金認定には役に立ちません。

生前よりしっかり準備しておきましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

相続税の計算方法には、節税となる重要なポイントがたくさん隠れています。

少しの工夫でしっかり節税になる反面、少しの工夫をしなかったばかりに税金が増えてしまう怖さも潜んでいます。

相続税申告や相続税対策につきましては、信頼できる専門家にご相談の上、しっかり準備をすることが大切です。

「納得できる安心な相続」ができるように、このポイントをしっかり押さえておきましょう!