病院やクリニックは、コロナ対策をどうするべきか?
こんにちは。
医療経営に専門特化した税理士の中村祐介です。
連日、ニュースでは感染症患者を受け入れている病院を中心に報道がされています。
しかし、感染症患者を受け入れていない病院やクリニックであっても、外来の減少、手術の減少、薬の長期処方からくる再診患者数の減少等、「コロナ恐慌」ともいえる厳しい状況になっています。
そんな時、病院やクリニック(診療所)はどうしたら良いのでしょうか。
1番大切なこと、それは資金ショートしないということです。
資金が回らなくなると、倒産してしまいます。
資金が回っていれば、コロナ終息まで事業を継続し、そこから持ち直すことができます。
そこで今回は、病院やクリニックでも使える「コロナ関係の特例」をまとめたうえで、医療機関がとるべきコロナ対策を「資金繰り」の面から解説していきたいと思います。
※この記事は次の方にオススメです。
・コロナ対策で資金繰りに不安がある人
・医療機関がコロナ対策として使える各種の新制度や特例を整理して知りたい人
病院やクリニックが使えるコロナ対策となる各種特例まとめ
国はコロナ対策として、さまざまな対策を講じています。
その数多くある対策の中から、医療機関でも適用を受けることができるものをまとめてみたいと思います。
(1)コロナ特別貸付
政策金融公庫による融資は特別利子補給により、実質無利子となっています。
(2)都道府県等による制度融資の活用
民間の金融機関にも、制度融資を活用することで、実質無利子となっています。
(3)持続化給付金
個人事業であれば最大100万円、法人であれば最大200万円の給付金となります。
その給付金の算定方法も公表され、非常に簡単です。
(4)繰戻還付の対象拡大
今期が赤字で、前期が黒字であった場合に、前期納付した税金の還付を受けることができるという制度です。
これにより、還付金という入金を得ることができます。
従来は資本金または出資金の額が1億円以下と限定されていましたが、10億円以下までOKとなり、その対象が拡大されました。
(5)税金・社会保険料の納付猶予
無担保かつ延滞税なしで、1年間の納付猶予を受けることができます。
特に人的産業である医療機関においては、社会保険料の金額はかなり大きな金額となります。
とはいえ、あくまでも「猶予」であるため、根本的な解決策ではありませんが、当面の資金繰りには効果的です。
(6)固定資産税の減免
病院の土地や建物にかかる固定資産税の金額もまた大きな金額となります。
対前年比で30〜50%減収となった場合には1/2に、50%以上減収となった場合には全額減免されます。
(7)雇用調整給付金
一時休業する場合の休業手当を補填するものです。60%部分までの9割と60%を超える部分については全額を給付してくれます。
ただし、その計算はかなり複雑になりますので、社労士さんに相談するのが良いと思います。
(8)IT導入補助金
業務効率化のためのシステム導入費用を補助してくれるものです。
オンライン診療など新領域へ進出するためのシステム導入をサポートしてくれます。
資金繰り改善のためには
資金繰りを改善するためには、「入金を増やして、出金を減らすこと」です。
・入金を増やす→上記(1)〜(4)
・出金を減らす(出金を補填するものを含む)→上記(5)〜(8)
このように考えると、頭の中が整理しやすいかと思います。
大切なことは片方だけではなく、両方取り組むということです。
そして、こうした対策はコロナの影響が深刻になるに伴い、どんどん拡充されてきています。
常に最新情報をとるようにしましょう。
もし、ご自身での確認が難しいようでしたら、外部の専門家から整理された情報を取得し、自院で適用できるものは何か、アドバイスをもらうようにしましょう。
固定費の削減も効果あり
上記のようなコロナ対策の特例的なものだけでなく、シンプルに固定費を削減することにも取り組んでいくべきです。
①地代家賃
自己所有の土地建物である病院やクリニックもありますが、賃貸されているケースもあると思います。
その賃貸が第3者からである場合には、値下げ交渉も視野に入れましょう。ただし、所有者側も多額の借金を返済しているケースも多く、現実的には難しいかもしれません。
その所有者が理事長先生個人や役員である場合には、支払に融通がきくこともあると思いますので、まずは賃貸関係を確認しましょう。
②MS法人との取引
役員の親族などの関係者が代表を務めることが多いMS法人との取引見直しは、即効性があり、その効果が期待できます。
取引内容を精査して、見直しをはかりましょう。
③委託料
外部委託しているものの中で、内製化によるコスト削減ができるものはないでしょうか。
もちろん、それにより品質が下がったり、手間が増えたりしてはいけませんが、費用対効果によっては内製化という選択もあります。
【このブロックのまとめ】
こうした固定費については、削減した月からその分だけ資金繰りは改善します。
その費用の特性に応じて、「即効性があるもの」や「時間はかかるが金額上のインパクトが強いもの」など、さまざまです。
まずは、自院の損益計算書を見て、着手できるところから始めてみましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
経営者の悩み・苦労の中で、トップレベルに苦しいのが「資金繰り」の悩みだと思います。
職員様には弱みは見せられないという先生がとても多いですが、そうであれば、ぜひ、外部の専門家を頼りにしてください。
自院にとって最優先すべき課題を抽出し、具体的な対策を立て、実行することで課題解決に向けて前進することができます。
その具体的な対策を立てる過程で必要となってくるのが、こうした最新情報になります。
必要な情報を取得し、整理し、有効に活用していく。
信頼できる外部の専門家と共に、この「コロナ恐慌」を乗り越えていきましょう!