令和2年度税制改正は寡婦控除の改正に注目
※最終更新日:2020年7月15日
こんにちは。
「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。
先月、令和2年度の税制改正大綱が発表されました。
全体感としては静かな感じでした。医療機関に関わる改正も少なかったです。
その前の税制改正の要望として挙がっていた項目も、決まらないものが多かったです。
「税制改正って、何か影響ありますか?」
こうした先生の心配は当然です。もちろん、税制改正のすべてを押さえる必要はありません。
先生に影響する部分のみ、噛み砕いて結論ベースでお伝えしています。
今回の税制改正は、まず現場レベルで「寡婦控除」が影響します。
そこで今回は、令和2年度税制改正の中から、医療機関に関係するものとして、「寡婦(夫)控除」の改正について解説します。
※この記事は次の人にオススメです。
・令和2年度の税制改正のうち、自分に影響する部分のみ把握しておきたい人
ちなみに、今回は年末調整に登場する寡婦控除の話ですので、「Q38年末調整ミス事例集」も併せてご確認頂くと良いと思います。
改正前の寡婦控除
寡婦控除は、女性が多い職場である医療機関では適用が多い所得控除ですので、忘れずに控除を受けるようにしましょう。
(1)離婚の場合
①扶養親族又は生計一の子がいる場合
(2)死別の場合
①扶養親族又は生計一の子がいる場合
②①がいなくても、合計所得金額500万円以下である場合
離婚の場合、①の扶養親族などがいない場合には合計所得が500万円以下であっても、寡婦控除の適用はありません。
金額要件のみで該当するのは、死別の場合のみです。
ここも間違いやすい論点ですので、ご注意ください。
これらの要件をクリアする場合には、27万円の控除をすることができます。
改正前の特別の寡婦
上記寡婦のうち、扶養親族である子がいて、合計所得金額が500万円以下である場合に、適用を受けることができます。
離婚の場合は、500万円以下という所得要件が乗っかってきます。
死別の場合は、①と②の両方の要件を満たすことになります。
これらの要件をクリアする場合には、35万円の控除をすることができます。
改正でこう変わった
今年の所得税から変わることになります。
改正点は大きく分けて、4点です。
(1)未婚のひとり親に寡婦(夫)控除を適用する
(2)見直し点
①寡婦に寡夫同様、500万円の所得制限を設ける
②住民票の続柄に「夫(未届)」「妻(未届)」の記載がある者を対象外とする
③子ありの寡夫の控除額を子ありの寡婦と同額の35万円とする
これらの改正点をまとめると、未婚であるか否かは問われなくなります。
また、寡婦か寡夫か(女性か男性か)という区分けもなくなりますので、幅広く寡婦(夫)控除の適用を受けることができるようになります。
逆に、寡婦に対して500万円の所得制限が生じますので、これまで寡婦控除を受けられていた方が受けられなくなるという可能性もあります。
所得500万円というのは、給与の額面収入だと678万円です。
実際の現場でこの所得制限にかかる方は、師長さんクラス等ごく限られてくるかと思いますが、気をつけたいところです。
補足として、税制ではありませんが、「未婚の児童扶養手当受給者に対する臨時・特別給付金」は実施しないことになります。
税制適用がない分、手当で補填するような形でしたが、税制適用になったことを受け、実施がなくなります。
まとめ:寡婦控除の場合
・全て所得制限500万円がかかります。
・寡夫の場合は、図の最上段「扶養子あり(要因問わず)35万円」のみ、適用になります。
死別 | 離別 | 未婚 | |
扶養子あり | 35万円 | 35万円 | 35万円 |
扶養子以外あり | 27万円 | 27万円 | ー |
なし | 27万円 | ー | ー |
まとめ
いかがでしたでしょうか。
令和2年度の税制改正は、医療機関にとって大きなインパクトをもたらすものではありません。
それよりも、昨年10月の消費税増税の影響を確認しなければなりません。
寡婦控除のように、税制改正の中から限られた該当項目をきちんと押さえておきましょう!