病院やクリニックは人件費率をどう経営に活かすのか?

 

最終更新日:2020年5月13日

こんにちは。

「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。

前回Q 49「病院やクリニックの材料費費病院やクリニックの材料費比率をどう経営に活かすか?」では、病院やクリニックでの財務分析のうち、材料費率について解説してきました。

今回は同じ費用関係の中から、人件費比率について解説していきます。

ご存知の通り、病院経営上、最大の費用が人件費です。

「医業収益のうち、人件費に何%かかっているのか」ということですが、実務上は、この人件費の額でどれくらいの医業収益があげられているのか、と考えます。

この人件費率を入り口に、さまざまな経営改善につなげることができます。

※この記事は次の人にオススメです。

人件費率を経営改善につなげたい人

なぜ人件費率は高いのか

前回の材料費比率と同様、基本的に人件費は医業収益に連動します。

医業収益が増えていけば、かかる人件費も増えていきます。逆もまた然りです。

つまり、人件費率自体はある程度一定に保たれるはずですが、そうはいかないケースがほとんどです。

実際問題として、収入の伸びよりも人件費が増えてしまうからです。

人件費比率の悪化は経営の悪化に直結します。人件費という固定費が主となるため、材料費比率に比べ、その改善に時間を要します。

人件費率の悪化をどう防ぐか

人件費率が悪化した場合、まずはその原因分析が必須となります。

ただし、単純に人件費率だけを見ても、原因は分かりません。

分解することが大切です。

具体的には、各職種別、各雇用形態別、各診療科別に集計して、原因を分析します。

どこに問題があるのでしょうか?

人手不足を背景に医師や看護師の給与が高騰してはいないでしょうか?

現場の要望を鵜呑みにして、非常勤の頭数が増えすぎていないでしょうか?

採算の悪い診療科はないでしょうか?

細かく分析してみると、必ず要因が出てきます。

無駄な残業を防ぐ

働き方改革が叫ばれる中、大切になってくるのが、残業の管理です。

無駄な残業・残業代が発生していないでしょうか?

承認ルールは機能していますでしょうか。

同じ現場でも、管理職が変わっただけで承認ルールが甘くなり、残業・残業代が増えることがあります。

また、残業して行うことの大半は、引き継ぎ文書の作成だというケースも散見されます。

これは、引き継ぎ方法や文書の記載ルールの変更で大きく改善します。

人件費の範囲に注意する

人件費には、付随する社会保険料や外部に委託した業務委託費も含めて考えましょう。

特に消費税が増税される中、10%となる業務委託費の増加を嫌い、業務を内製化する動きも各業界で出てきています。

直接雇用が良いのか、人材派遣などの業務委託が良いのか、改めて比較検討する病院が増えています。

金額の大小のみならず、質の面も重視して、比較検討するようにしてください。

まとめ

現場が変わると、人件費率も変わります。

財務分析の価値は、現場の変化にアラートを鳴らしてくれるという点です。

これを使わない手はありません。

ちなみに、厚生労働省の病院経営管理指標によると、医療法人の一般病院200床だと、57%くらいのようです。

皆様と同じような病院だとどうでしょうか。

経営改善の切り口として、この人件費率の分析は欠かすことができません。

ぜひ、有効に活用したいですね!

※節税対策につなげてしまう改善策もあります。

詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

・「Q5 増え続ける人件費に何か良い対策はないでしょうか?(所得拡大税制)