病院やクリニックの財務分析で大切な収益性とは?

 

最終更新日:2020年5月13日

こんにちは。

「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。

Q9「病院経営に必要な病院経営管理指標の3つの指標とは?」では、病院やクリニックの財務分析をする時には、「収益性」・「安全性」・「機能性」の3つの観点から分析することが大切だとお話してきました。

そこで今回は、病院やクリニックの「収益性」について考えてみたいと思います。

経営の目的のひとつは、「収益を上げること」です。

財務分析を通じて、自院の「収益を上げる力」を調べてみましょう。

※この記事は次の人にオススメです。

利益率の違いがよくわからない人

利益率を経営に生かしたい人

利益率関係

病院やクリニックの財務分析による収益性は、概ね2つの方向があります。

どれくらい効率よく儲けが出ているのかという「利益率関係」と、どれくらい収入に対して費用がかかっているかという「費用関係」です。

「利益率関係」では、次の3つの指標を押さえておきましょう。

(1)医業利益率(医業利益÷医業収益)

(2)経常利益率(経常利益÷医業収益)

(3)償却前医業利益率((医業利益+減価償却費)÷医業収益)

医業利益率のポイントは?

これは、医業収益から医業費用を差し引いた医業利益が、どれくらい残っているかという割合です。

医業収益のうち、本業の医業活動を通じて得た利益がどれくらい残っているかを表します。

当然、高い方が良く、イコール利益体質であることになります。

逆に、低い場合はどうでしょうか?

医療機関で多いケースは、医業費用が多いケースです。

同じくらいの事業規模・病院機能で、この医業利益率が大きく違う場合、詳細確認すると医業費用、特に人件費の違いだったりしますので、注意が必要です。

経常利益率のポイントは?

上記の医業利益に医業外の収益・費用を加算・減算したものを経常利益と言います。

毎期、経常的に見込める利益という意味です。

代表的なものは、雑収入と支払利息です。

病院やクリニックの場合、これらの金額が多額になることは少ないため、経常利益は医業利益と近い金額になったりします。

結果として、医業利益率は経常利益率と近い比率になることが多いです。

経常的に見込める利益=返済原資として見込める金額とも言えるため、金融機関なども重視している利益です。

償却前医業利益率のポイントは?

医業利益率に減価償却費を加えた比率です。

なぜ、加えるのでしょうか。

それは、減価償却費自体がお金の流出を伴うものではないため、医業収益のうち、実質的にお金の貯まりをみるためには、お金が出ていかない減価償却費は足し返す必要があるのです。

キャッシュベースでの利益とも言うことができ、借入金の返済原資や設備投資の原資と見込んだり、ごく簡単なキャッシュフロー計算書としての使い方もできる指標です。

ベンチマーク分析が最も重要

自院の指標が計算できましたら、まず過去の数字と比較してみてください。

そして、悪化している場合には、原因分析が必須です。

悪化には必ず理由があります。

そして、同業他社との比較も必須です。(ベンチマーク分析)

同じ開設主体・同じ病院種別・同じ病床数で、比較してみましょう。

こちらも、負けているのであれば、原因分析が必須です。

良い比率が出ない理由は必ず存在します。

まとめ

今回は、病院やクリニックの財務分析のうち、収益性の中から、「利益率関係」に絞って解説してきました。

次回は「費用関係」について、解説していきます。

ベンチマーク分析は、厚生労働省が出している病院経営管理指標を用いると良いと思います。

もっと幅広く、データ分析について学びたい場合には、詳細データとその解説まで掲載されている日本医療企画様の「ヘルスケア業界データブック2019」がオススメです。

私も参考にさせて頂いています。