医療法人の出資持分を評価する時の注意点とは
こんにちは。
「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。
「持分のある医療法人」である先生は、自院の「出資持分の評価額」をご存知でしょうか。
「計算してもらったことないよ」
こうした先生も多くいらっしゃいます。
顧問税理士の相続税対策や事業承継対策が、別料金となっていることが最大の要因です。
「医療経営 中村税理士事務所」では、持分ありの医療法人のお客様につきましては、必ず出資持分の評価額を計算して、お伝えし、共有しています。
今、出資持分の評価額がどうなっているのか、非常に大切なことであるからです。
そこで今回は「持分ありの医療法人の出資評価の考え方」について、簡単に解説していきます。
もちろん、ご自身で計算できるようになる必要はありません。
計算の流れを知ることで、出資持分の特徴や傾向・性質を理解できるようになります。
※この記事は次の人にオススメです。
・持分ありの医療法人で、自院の出資持分の評価額を把握していない先生
評価方法の確定
まずは、評価方法の確定です。
①類似業種比準方式
②純資産価額方式
③配当還元方式
これらの方式がありますが、配当が禁止されている医療法人の場合、配当還元方式は使いません。
株式会社の場合、この配当還元方式を使えるか否かの判定で時間がかかるケースもありますが、その点、医療法人はシンプルです。
自然と上記2つの方法に絞られることになります。
規模判定
次に、規模判定を行います。
(1)大会社
(2)中会社
(3)小会社
この3つが基本です。これに加え、「比準要素数1の会社」という例外も存在します。
他にも例外(特定評価会社)は存在しますが、通常の経営状態であれば上記4択でOKです。
評価方法の確定
上記、規模の判定ができると、連動して評価方法が確定します。
(1)大会社・・・類似業種比準方式(または純資産価額方式)
(2)中会社・・・類似業種比準方式と純資産価額方式の併用(または純資産価額方式)
※併用→類似が0.9or0.75or0.6となり、純資産がその残額
(3)小会社・・・純資産価額方式(または類似業種比準方式と純資産価額方式の併用)
※併用→類似が0.5となり、純資産がその残額
(4)比準要素数1の会社・・・純資産価額方式(または類似業種比準方式と純資産価額方式の併用)
※併用→類似が0.25となり、純資産がその残額
結論として、規模が大きい程、類似業種比準方式の影響が大きくなります。
反対に、規模が小さくになるにつれて、類似業種比準方式の影響は小さくなり、純資産価額方式の影響が大きくなります。
つまり、自院が大会社であれば類似業種比準方式に対する対策が必要になりますし、小会社であれば、類似業種比準価額に対する対策をしても効果は薄いということです。
画一的な対策ではなく、規模に応じた対策を立てる必要があります。
類似業種比準方式のポイント
国税庁が毎年発表する株価に基づいて計算します。
ベースとなるのが、類似業種の株価です。
この類似業種の株価に、自院の利益と純資産の金額を用いて調整していきます。
この類似業種の株価を見る際に、「医療・福祉」ではなく、「その他の産業」で見ます。
不思議な感じがしますが、医療法人は医療・福祉系の事業会社とは異なる評価基準となります。
また、利益を用いて調整するわけですが、経常的な利益の金額で計算される点は要注意です。
過去の繰越欠損金を控除した場合などについては、経常的な利益を押さえたことにはなりません。
純資産価額方式のポイント
課税時期における相続税評価額を計算していきます。
その際、課税時期3年以内に取得した土地や家屋は通常の取引価額で評価します。
駆け込みで取得しても、相続税評価額で評価できないということです。
ただし、その簿価が通常の取引価額と変わらないとされる場合には、簿価でOKとされています。
比準要素数1に該当するのか
類似業種比準方式を使う際、「配当」・「利益」・「純資産」の3つの要素を用います。
そのいずれか2つがゼロであり、かつ、直前々期末を基に計算した場合にもいずれか2つがゼロである場合には、「比準要素数1」の会社として評価されることになります。
医療法人の場合、配当禁止規定により、既に「配当」がゼロの状態です。
「純資産」がゼロということは稀でしょうから、「利益」次第で簡単に「比準要素数1」の会社に該当します。
該当することにより、評価方法は「純資産価額方式」で求めた金額の影響が大きくなります。
先生が細かな理屈を押さえる必要はありませんが、医療法人の場合、配当ができないことで内部留保が厚くなり、結果として、「純資産価額方式」の評価額が高くなる傾向があります。
つまり、比較的評価額の低い「類似業種比準方式」で評価するためにも、該当しないように注意したいポイントです。
過度な節税対策により、「利益」のマイナスが続き、「比準要素数1」に該当して、評価額が上がることのないようにしましょう。
最後に
まずは、顧問税理士に出資持分の評価額を計算してもらうことが最初の第1歩です。
そして、評価額を計算し、その評価額を下げるためには、各種の対策が必要になります。
その出資持分の評価を下げる対策については、このブログでも解説しています。
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