病院やクリニックの消費税増税にどんな対策を取っているのか?〜時系列〜

 

最終更新日:2020年6月10日

令和元年10月より、消費税が10%に増税となりました。

これに対し、病院やクリニックへはどのような対策を取ってきたのでしょうか?

また、今後の増税の際には、どのような対策を取ったら良いのでしょうか?

「消費税の増税対策はこうしましょう」

医療経営専門の税理士として、いろいろご提案してきました。

そこで今回は、関与先の病院の理事会やクリニックの院長面談の際に出た施策を、時系列でまとめてみましたので、今後の参考にしてください。

※この記事は次の人にオススメです。

消費税の増税対策をしっかり取りたい人

消費税の増税対策にはどのようなものがあるのか、知りたい人

2019年春頃の施策

(1)控除できない消費税額の把握

まずは、入り口として、消費税が2%上がることで、どれくらいの影響が出るのでしょうか?

そのシミュレーションからスタートすべきです。

大きな影響が出るのであれば、大きな対策。

影響が小さいのであれば、小さな対策でOKなはずです。

何事もそうですが、まずは影響の範囲(金額)を想定しましょう。

(2)購入時期の検討

多くの病院では、期の始まりの時期に設備投資計画を立てると思います。

今期は10月以降に必要となるものについては、9月までに購入を済ます計画を立てたところが多かったです。

消費税増税に限らず、常に設備投資の計画は立てるようにしましょう。

今期のみならず、3年間の中期計画でも良いと思います。

(3)役員報酬の減額

(4)定期昇給を抑える

これらの人件費関係の話は、消費税増税対応だけのためではなく、前期の経営状況の悪化を主な理由とし、そのほか1つの要因として加味した医療機関もあったようです。

(5)リースや保守などの契約を8%のうちに締結(経過措置を適用)

1番積極的に対策を取った医療機関では、この経過措置をうまく利用しました。

不動産や工事の請負などは、半年前の3月31日までに契約を締結しておくと、10月1日以降も引き続き8%で済むという経過措置が存在します。

これが使えると現存の契約が8%となり、有利です。

ちなみに、5%から8%へ上がった時もこの経過措置は存在し、今現在も5%のリース契約を続けている医療機関もあります。

2019年9月(増税直前)まで

(1)夏季賞与を抑える

賞与は利益処分であるため、直前までの経営状況を加味して支給する医療機関が多いと思いますが、そこに今後の見通しも加味して支給するという考え方もあります。

消費税増税をネガティブ要因として加味した医療機関もありました。

(2)高額医療機器の購入

基本的に、期首には設備投資計画を立てているかとは思いますが、想定外で必要となったものについては、9月末までに購入した医療機関が多かったです。

(3)外注業務の見直し

業界問わず、多かったのがこの動きです。

外部委託の委託料には消費税がかかります。

反対に自院の職員でまかなえば、給与となり、消費税はかかりませんから、増税の影響は受けません。

「外部委託を辞めて、自院内で完結する」という内製化の動きが出ています。

ただし、注意すべき点もあります。

消費税はかからなくなりますが、当然、人員増による給与や付随する社会保険料、残業したことによる残業代など人件費は増加します。

また、委託は契約範囲や契約会社を見直すことで容易にコスト削減できますが、人件費は固定化しますので、調整が困難となります。

そして、忘れてはいけないのが、業務の質です。

内製化することで、業務の質は保てるでしょうか。

例えば、給与計算を社会保険労務士事務所へ委託していたものを辞め、自分達で計算するようにしたところ、ミスが連発した・・・では話になりません。

増税の都度、内製化へ動きが出ますが、慎重に検討したいですね。

増税後

(1)コスト削減の徹底

消費税増税の時期は、コスト意識が高まる時期です。

電気・エアコン・・・、こまめに消すだけでも年間の光熱費はかなり違います。

職員様への注意喚起をする、良い機会にしている医療機関もあります。

(2)設備投資に対する税制優遇措置の適用を検討

設備投資には大きなお金が動きます。つまり、消費税10%の影響をもろに受けます。

そうなると診療報酬による補填だけでは足りません。

そこで設備投資については、減税で対応しましょうということになっています。

昨年の税制改正でできた設備投資減税には、以前のQ19「平成31年度の税制改正のうち、病院・クリニックが注意すべきポイントは?」で解説をしていますので、そちらも併せてご確認ください。

設備投資をした時に受けることができる節税対策が分かると思います。

(3)適格請求書等保存方式への対応

消費税は大きく変わっていくことになります。

こちらも以前のQ25「適格請求書等保存方式に病院やクリニックはどう備えるべきか?」で解説していますので、併せてご確認ください。

医療機関には取るべき行動がありますので、今から準備を進めて頂ければと思います。

まとめ

医療機関が取るべき消費税増税への対策を解説してきました。

気は早いですが、次の増税のタイミングでも使える対策です。

10%になった経営への影響は、この後もずっと残ることになります。

コスト削減の徹底や設備投資減税を漏れなく適用するなど、「当たり前のことをきっちりやる」ということに尽きるのだと思います。