医療法人で行う逓増定期保険の活用術とは

 

こんにちは。

「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。

あなたの加入している生命保険の加入目的と出口戦略は何でしょうか。

これが即答できないと、将来困るかもしれません。

「言われたまま、加入したからよく分からないよ」

「担当者に任せてあるから、多分大丈夫だと思う。」

こうした先生もいらっしゃると思います。

しかし、加入した状況と今の状況が変わっている場合がほとんどだと思います。

担当者が変更になったら、どうでしょうか。

やはり、生命保険において、加入目的の明確化と出口戦略は必須です。

そこで今回は、生命保険を活用した事例をご紹介致します。

これを読んで、ご自身の生命保険を見直すきっかけにしてください。

※この記事は下記の方にオススメです。

生命保険の活用術について、再度確認しておきたい人

生命保険の見直しを検討している人

逓増定期保険

契約時から徐々に保障額が増えていく定期保険です。

医療法人として活用する生命保険としては、非常にメジャーなものになります。

保障額の増加も「5年程度の短いスパンでグッと上昇するもの」や「10年程度のスパンでじっくり上昇するもの」があり、各法人での状況に即して選択し、加入するものになります。

代表的なものに、保険料の半分が損金(経費)となる「1/2損金タイプ」がありますが、「1/3」や「1/4」というものもあります。

こちらは被契約者の年齢や保険期間に応じて変わりますが、保険期間満了時の年齢が70歳未満である場合には、「1/2損金タイプ」となります。

多くの先生が退職金の原資として加入することもあり、70歳までの退職を見込んで「1/2損金タイプ」に加入していると思います。

この逓増定期では、下記のような効果があります。

(1)死亡保障

(2)退職金の原資の備え

(3)節税(課税の繰延)

こうした病医院経営をしていく上で、欠かすことのできない機能があります。

自院内のみならず、外部留保(=保険会社)を行うことで、確実に資金を貯めていくことができます。

逓増定期の注意点

逓増定期保険は、解約返礼率が変動します。

保険の種類にもよりますが、ピークが3〜5年程度であり、その前後で解約すると解約返礼率は大きく下がります。

ピークの間に解約できれば何も問題ないわけですが、退職金の原資と見込んでいる場合には、退職時期と合わせる必要が出てきます。

実務上、多くのケースでは、当初の退職想定時期よりずれ込むことがほとんどです。

体が動く限り、頑張りたいと思うのは自然なことです。

対策として、あまりにもピークの短いものはオススメできません。

ある程度、幅を持って考えましょう。

低解約型の逓増定期保険

当初、極端に低い解約返礼率で推移し、ある時期急に返礼率が上昇するタイプの逓増定期保険も見ておきましょう。

なぜ、このような設計になるのでしょうか。

極端に低い時期に解約するものではありません。

逆に、急に上昇しますが、その後再び返礼率は下降しますので、そのまま持ち続ける意味もありません。

それでは、低解約型の逓増定期保険はどのように活用したら良いのでしょうか。

(1)ピークで解約

低解約型とはいえ、逓増定期保険には違いがありませんので、ピーク時に解約します。

この解約返戻金を退職金等に当てるわけですが、返戻金自体が課税となりますので、退職金と同じ期に解約する等、出口(解約時期)戦略が必要になります。

(2)解約返礼率が上がる直前に個人へ譲渡

法人から個人へ解約返戻金相当額で譲渡します。法人から個人へ名義変更するわけですが、これは無料というわけにはいきません。

その譲渡金額が、解約返戻金相当額となります。

ただ、この譲渡時点ではまだ返礼率が低いままですので、解約返戻金自体も低いものになります。

その後、個人契約となった時点で、返礼率は上昇し、解約返礼金も上昇します。

つまり、保険料は法人で負担した上で、個人として支払った譲渡金額よりずっと大きい金額を手にすることができ、投資効果を得ることができます。

反対に法人から見れば、支払い続けた保険料と低い解約返戻金相当額との差額を費用化できることになります。

注意点もあります。

個人へ契約者変更したということは、今後の保険料負担は個人で行うことになりますので、保険料の負担が生じます。

とはいえ、冒頭でも説明した通り、返礼率がその後下がっていくことに変わりはありませんので、やはり、持ち続けるわけにはいきません。

それでは、どうしたら良いでしょうか。

次に2パターンが想定されます。

(1)払済みにする

払済みにすることで、その後の保険料負担が生じなくなり、解約返戻金が減少することもなくなります。

個人としての保障と将来解約して資金として確保しておくことができます。

(2)解約する

もちろん、解約することもできます。

その時点で、解約返戻金を得ます。

注意点は、所得税の課税が強いことにあります。

{「解約返戻金ー(譲渡金額+個人負担した保険料)」ー特別控除50万円}×1/2

この金額が一時所得となり、これに所得税率を乗じて、所得税を計算します。

50万円を控除できることや1/2できることから、給与などよりはマシですが、それなりの所得税負担となりますので、事前に税額計算しておくことが大切です。

ちなみに、譲渡前に法人が負担した保険料については、この一時所得の金額の計算上控除できませんので気をつけましょう。

医療法人で逓増定期保険を上手に活用する

低解約型の逓増定期保険を個人へ移すことで、出資持分の評価を下げたり、相続税対策として納税資金の確保したりすることができます。

もちろん、通常の逓増定期保険では、役員退職金の原資確保や理事長先生の万が一の保障としての王道の機能があります。

こうして生命保険を上手の活用することで、病医院経営は安定し、将来へのリスクを減らすことができます。

今一度、現状の生命保険がベストなのか、専門家にご相談の上、確認することをオススメします。