病院やクリニックでも簡単にできる!決算予測の3つの作り方

 

(最終更新日:2020年4月15日)

多くの病院や医療法人は、4月〜3月を事業年度として経営活動をしています。

この記事を書いている12月時点だと、いよいよ3ヶ月と少しということになりました。

今期はどれくらいの利益になりそうでしょうか?

また、どれくらいの納税額になりそうでしょうか?

そこで、今回は決算予測の作り方について、解説していきます。

※この記事は次の人にオススメです。

決算の結果を早く知りたい人

決算予測を作れるようになりたい人

決算予測を知ることで、決算対策を実行し、納得のいく決算を迎えたい人

決算予測の考え方は3つ

「今期、税金どれくらいになりそうですか?」

顧問税理士がこの時期、よくいただくご質問です。

それにはまず、当期の最終利益を見込まなければなりません。(=「決算予測」と言います)

最終利益に税率をかけたものが、納税額となるからです。

決算予測の考え方には、次のようなものがあります。

(1)前期実績に基づく方法

(2)当期のペースを維持する方法

(3)当期の増減率を加味する方法

たとえば、12月の場合、4月〜11月の利益はすでに確定していて、12〜3月の利益を予測すると考えます。

前期実績に基づく方法

予測する12月〜3月の利益を、前期の12月〜3月と同じにしてしまう方法です。

当期の4月〜11月の利益(実績値)

前期の12月〜3月の利益(前期の実績値)

③①+②=当期の着地利益の予測

メリットは非常に簡単ということです。

単純に、前期の利益を持ってくればいいだけです。

デメリットは、当期の状況が加味されないということです。

当期よりも増収傾向である、コストを削減した・・・等の経営変化が反映されていません。

当期と前期が同じような経営状況である場合には、簡単にできるため良い方法です。

当期のペースを維持する方法

前期は考えずに、ここまでの当期の状況を最優先にする方法です。

当期の4月〜11月の利益(実績値)÷8ヶ月=1ヶ月あたりの利益

上記①×12ヶ月当期の着地利益の予測

メリットは、こちらも非常に簡単であるということです。

経過した8ヶ月で割りますので、今期あった臨時収入や臨時支出も平らになり、ある程度均一的な利益となります。

それを12ヶ月分に直すことで、年間利益と考える方法です。

①とは異なり、当期の経営状況がきれいに加味されています。

デメリットは、季節変動がある場合、全く考慮されないという点です。

この例は4〜11月で、平均利益を計算しています。

ということは、冬季が繁忙期である医療機関においては、比較的閑散期の利益ということになってしまいます。

月々の利益変動が少ない医療機関では、簡単に年間最終利益を求めることができますが、冬場の風邪などによる外来収入の多い医療機関では、正しい最終利益が予測できない可能性があります。

当期の増減率を加味する方法

前期をベースに、当期の増減率を元に決算予測を作成する方法です。

4月〜11月における医業収益の前期増減率を使う

例えば、11月時点で105%の増収だとします。そして、前期の医業収益が10億円であった場合、

10億円×105%=10億5千万円が決算予測上の医業収益となります。

医薬品費や診療材料費は医業収益に連動させる

これらの費用は増収の時には増加し、減収の時には減少するものです。

11月末時点での医薬品費比率や診療材料費比率を決算予測上の医業収益にかけて計算します。

例えば、20%できているのであれば、10億5千万円×20%=2億1千万円となります。

人件費やその他の固定費

これらは特段、医業収益に連動させる必要はありません。

4月〜11月までの状況を見て、残りの期間も見込んで計上してください。

人員の頭数が増えた、新たにリース契約を結んだ・・・等、今期これまでの状況を踏襲してもらえればOKです。

①ー(②+③)=決算予測上の最終利益

この方法のメリットは、前期と比較した場合の「当期のペース」を反映できる点にあります。

期首8ヶ月で増収ペースなのであれば、当期は増収になる可能性が高いですし、逆もまた然りです。

デメリットは費用を医業収益に「連動するもの」と「しないもの」に区分して集計するため、前回の2つの方法と比較すると若干手間がかかります。

決算予測を作る上で注意すべきことは

これまでの3つの方法に共通しているのは、平準化しているという点です。

つまり、「イレギュラーなこと」は加味していないということです。

今回の事例で考えると、12月〜3月に予定されるイレギュラーなことを計算に含めなければなりません。

例えば、下記のようなことです。

収入に関するもの・・・受け取る予定の助成金や保険の解約金(差益)など

費用に関するもの・・・修繕費や退職金の支払い、固定資産の除却損や売却損など

これらを決算予測に織り込むことで、正確な最終予測利益を計算することができます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

どの方法も1長1短です。つまり、医療機関の経営状況によって、使う方法は異なるということです。

早め早めに決算予測を作成し、良い予測となればその通りになるように、反対に、悪い予測となればどうしたら改善できるのか、行動することが大切です。

そして、その行動は少しでも早くすることが大切です。

決算予測を早く作る理由はそこにあります。

早め早めの決算対策で、万全の体制で決算を迎えましょう!