赤字になったら、繰越?繰戻?
※最終更新日:2020年6月4日
こんにちは。
「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。
「今期は赤字だよ」
そう嘆く先生もいらっしゃるかと思います。
病院の平均利益率が「+5%」〜「△5%」という経営統計もあります。
つまり、かなりの確率で赤字で決算を終えている病院が多いということです。
赤字になると、経営上、もしくは資金繰り上問題が出てきますので、そこのカバーが最重要です。
その次に、税務上はどうしたら良いのでしょうか。
そこで今回は、ご相談の多い赤字になった場合のその後の税務上の取り扱いについて解説していきます。
※この記事は次の人にオススメです。
・赤字に終わり、繰越控除で節税したい人
・赤字に終わり、繰戻還付で資金繰り対策をしたい人
繰越控除
基本となる考え方がこの【繰越控除】です。
欠損金(赤字)は、それが生じた事業年度の翌年以降10年間に渡って生じた所得と相殺できるというものです。
ちょこちょこ改正があって、今は10年間に渡って、適用を受けることができますので、非常に大きなメリットがあります。
個人開業医の場合、この法人税の適用ではなく、所得税の適用を受けるになり、その場合には3年間しか控除を受けられませんので、法人であるメリットのひとつとも言えます。
ただし、出資金1億円超の病院は、全額相殺することはできず、所得金額の50%までになりますので、どんなに赤字が出ても、翌期以降は課税が出ますので注意が必要です。
繰戻還付
繰越控除の逆が、この【繰戻還付】です。
欠損金(赤字)を、前事業年度に繰戻して、既に納めた法人税の還付を受けることができます。
繰越控除との選択になりますので、有利な方を選択してください。
ただし、出資金1億円超の病院は解散した場合などを除き、この繰戻還付の適用はありません。
必然的に繰越控除の適用を受けることになりますので注意しましょう。
※コロナ特例として、出資金1億円を超えても10億円以下であれば適用可能となっています。
まとめ
繰越控除・繰戻還付は赤字となった事業年度以降(又は以前)、税負担を和らげてくれるものになりますので、必ず適用を受けるようにしましょう。
ポイントは、繰越控除・繰戻還付の選択です。
基本的には繰越控除を受けることを念頭に、翌期10年以降の見通しが悪い場合や、廃院する予定があり繰越控除の適用を受けきれない場合などには、繰戻還付の適用を受けるようにしましょう。