MS法人のために医療法ではなく会社法を知る!Q179

 

こんにちは。

「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。

「会社法」という言葉を聞いたことがありますでしょうか。

一般の事業会社の社長さんは、会社法を意識されています。

それは、医療法人の先生方でいうところの「医療法」にあたるからです。

先生方は、医療法の影響を受けながら日々経営されているはずです。

「うちは医療機関だから会社法は関係ないんだね」

そうは言っても、実は先生方にとって無関係ではありません。

それが「MS法人」です。

「MS法人」は会社法の適用を受け、「医療法」の適用は受けません。

そこが「MS法人」のメリットのひとつです。

今回はMS法人をお持ちの先生方に向けて、「会社法」の要点を整理して解説していきます。

MS法人については、過去の記事で合同会社で設立することについて解説していきました。

とはいえ、実務上はまだまだ株式会社形態が多いので、今回はそちらを念頭において解説していきます。

※合同会社については下記の記事をご覧ください

Q173「病院やクリニックを支えるMS法人に合同会社はいかがですか?

※この記事は次の人にオススメです

・MS法人をお持ちの先生

取締役会は必要か

まず、「取締役会」の「ある会社」と「ない会社」に分けることができます。

実務的にどう違うのでしょうか。

「株主総会」の権限に違いが表れます。

「ない会社」は「株主総会」がMS法人の全てを決定します。

取締役会の決議を経る必要がないため、小規模なMS法人を運営されるのであれば、実務上は「ない会社」で十分です。

株主兼取締役の人が1名いれば大丈夫です。

※株主の多い会社の場合には株主総会の開催自体が手間なので、「ある会社」の方が便利といえます。

1株に1議決権

議決権は、医療法との違いのひとつになります。

株を多く持っている人に多くの議決権が集まります。(例外として議決権の制限された株式もあります)

医療法人のように1人1議決権ではありません。

多く持つほど、経営権は安定します。

逆に、医療法人は危険ということです。

しっかり持分を持つ社員を管理・把握しておく必要があります。

自己株式の取得もOK

MS法人が自分の株式を取得する自己株式もOKです。

医療法人はNGです。

実務的には、相続人が取得したMS法人の株式をMS法人側で買い戻すことがあります。

これによって、相続人は株式を現金化することができます。(ただし、約20%の課税あり)

遺産分割や事業承継をする上で、自己株式の取得は使える方法です。

配当もOK

医療法人での配当禁止は有名な話です。(医療法第54条)

配当自体のみならず、理事長先生への貸付や社宅等、配当の類似行為まで注意が必要となります。

その点、株式会社では配当が可能です。

MS法人に溜まったお金を株主へ配当という形を持って還元することができます。

実際に配当を行う際には「分配可能額」という最高限度額が定められています。

ざっくり言いますと「貸借対照表の剰余金(その他利益とその他資本)」から自己株式を引いた金額となります。

過去の蓄積したお金の範囲で行うイメージです。

ただし、配当後の貸借対照表の純資産が300万円を下回ってはいけないことになっています。

医療機関でも会社法の知識を

このように医療法人の理事長先生においても、MS法人を所有しているのであれば、「会社法」の知識は必要になります。

当然「医療法」の方が大事になりますので、セットで勉強されるのも良いのですが、こうした知識の上に実務のノウハウを持つ専門家と連携するのがベストかと思います。