所得税は2020年から増税になる先生が多いのでご注意をQ107

 

※最終更新日:2020年7月15日

こんにちは。

「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。

2020年も始まりまして、もう1/4が経過しています。

2020年から改正が入り、所得の高い先生方は所得税が増税になる可能性が高いのですが、ご存知でしょうか。

「今年から何か変わるんでしたっけ?」

こうした先生もいらっしゃるのではないでしょうか。

税制改正が出た時にお聞きになられていても、2020年になり実際適用になるまで、結構なタイムラグがありましたので、お忘れの先生も多い印象です。

そこで今回は、過去の税制改正の所得税の中から、2020年から適用になり、先生方に影響するものをピックアップして解説していきます。

※この記事は次の人にオススメです。

2020年から改正になっていることを思い出したい人

今年増税になる可能性があることを知らない人

2020年から適用になる3つのポイント

2020年から適用になるポイントは3つです。

(1)給与所得控除と公的年金等控除の引き下げ

(2)所得金額調整控除の創設

(3)基礎控除の改正

給与所得控除と公的年金等控除の引き下げ

給与所得控除の引き下げ

給与所得金額(最低金額):65万円→55万円

10万円の引き下げになりました。

全員一律引き下げなのですが、特に増税幅が大きいのは、給与等の収入金額が850万円を超える人です。

上限220万円だった給与所得控除という非課税枠が195万円に引き下がることで、給与所得というもうけ(=課税対象)が25万円増えることになります。

個人開業医の先生方は、給与所得ではなく「事業所得」ですので関係ありませんし、産業医等の「給与所得」があったとしても、年間収入が850万円にはならないかと思いますので、心配ありません。

心配なのは、医療法人である開業医の先生や、病院の理事長先生・役員の先生です。

皆様は役員報酬という「給与所得」ですので、影響することになります。

また、現場レベルだと常勤の医師、看護師長などの役職者は該当するかもしれません。

ただし、一定要件のもと、救済措置がありますので、それについては下記のブロックで解説していきます。

公的年金等控除の引き下げ

これも給与と同じイメージです。

公的年金等控除(65歳以上の最低金額):120万円→110万円

65歳以上の方の場合、公的年金等控除という非課税枠が120万円ありましたが、こちらも10万円引き下がります。

さらに、年金以外の所得が1,000万円超の場合は100万円に、2,000万円超の場合は90万円まで引き下がります。

先生方の中でも、65歳以上で現役で活躍されていて、年金以外の所得2,000万円超という方も多いですので、この部分でも増税になります。

先程の給与所得の引き下げと両方該当する方は、各々上限10万円として、10万円を超える部分の金額を給与所得から控除することになります。(つまり、給与所得で10万円控除が取れる形がほとんどだと思います。)

基礎控除の改正

そもそも、なぜ給与所得控除や公的年金等控除の引き下げが行われたのでしょうか。

それは、働き方の多様化に対応するためと言われています。

昔と違い、「定年まで会社員→年金生活」になるとは限らず、フリーランスなどの事業所得の方が増えたため、給与をもらう人だけに関係する給与所得控除ではなく、全員に関係する基礎控除を厚くすることになりました。

基礎控除:38万円→48万円

結果として、給与所得控除や公的年金等控除が10万円引き下がっていますので、大部分の人はプラスマイナスゼロとなります。

増税でも減税でもありません。

ただし、これもやはり、所得金額の高い先生方はプラスマイナスゼロとはなりません。

合計所得金額が2,400万円を超えると基礎控除額は減り始め、2,500万円を超えると基礎控除はゼロになります。

基礎控除:38万円→0円

仮に、所得税40%(住民税10%)の先生だと、約19万円増税となります。

本来、控除という非課税枠が移動する話だったわけですが、高所得者に対する増税という以前からの流れがこの部分にも表れています。

所得金額調整控除の創設

最後に、給与所得控除引き下げの救済措置です。

子育て世帯(23歳未満の扶養親族や特別障害者)等については、税負担増とならないように、最大15万円増の所得金額調整控除が入ります。

これにより、給与等の収入が850万円を超えていき、給与所得控除が25万円減額(220万円→195万円)する方であっても、所得金額調整控除15万円+基礎控除10万円=25万円となり、給与所得控除の減額は相殺されて影響が出ないことになります。

影響が出ない方をまとめると、このようになります。

給与等の収入金額が850万円以下の人

給与所得控除等が10万円減る→基礎控除が10万円増える  ∴プラスマイナスゼロ

給与等の収入金額が850万円超の人で子育て等世帯の人

給与所得控除が10万円以上減る→基礎控除が10万円増えても足りない→不足分を所得金額調整控除でカバー  ∴プラスマイナスゼロ

この所得金額調整控除は、子育て世帯等であれば、所得の高い先生方でも使うことができます。

とは言え、そもそも合計所得金額2,500万円超の先生は基礎控除がゼロになっていますので、所得金額調整控除だけではカバーしきれません。

影響は出てしまいますので、今後ますます節税対策の重要性が増してくることになります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

表面上は、働き方の多様化の裏で「給与所得控除・公的年金等控除→基礎控除への振替」という形でしたが、実質は高所得者への増税となっています。

対策として、医療法人の先生は役員報酬を引き下げ、合計所得金額を基礎控除の改正の影響が出ない2,400万円以下にすることが有効です。

ただし、当然、「収入」が減ることを意味しますので、増税額以上に実収入が少なくなってしまいます。

そして、結果として法人に残る利益は多くなりますので、今後この利益をどうしていくのか、ここが1番のポイントであり、コツでもあります。

どう利益を活用していくのか、専門家にご相談の上、個人・法人のバランスの取れた医院経営をしていきましょう!