医療法人の交際費課税への影響とは(令和6年度税制改正)Q192
こんにちは。
「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。
今回も令和6年度税制改正の中から、医療法人の理事長先生に関係する項目をピックアップして解説していきます。
先生方に馴染みの深い「交際費」です。
改正だけだと一言で終わってしまいますので、全体の取り扱いも改めて整理して解説していきます。
※この記事は次の先生にオススメです
・交際費の取り扱いについて、改正点を含めて理解したい先生
持分ありの医療法人と交際費
800万円という限度額があり、これを超えると経費になりません。
ただ、800万円を超える医療法人というのはほとんどありません。
「ひとり医師医療法人」であれば、事業年度あたり150万円くらいが平均と思われます。
では、「病院」なら多いのかというと必ずしもそうとは限りません。
つまり、「持分あり」であれば、交際費で悩まれることはほぼないと思います。
持分なしの医療法人
まず、「交際費」を2つに分けます。
1.接待飲食以外の交際費(例:贈答品や慶弔費)
2.接待飲食費
その結果、1は全額経費になりません。2は50%経費になりません。
つまり、接待飲食費の50%しか経費になりません。
厳密には、全ての持分なし医療法人が該当するわけではありません。
(総資産の簿価ー総負債の簿価)×60%>1億円 ∴該当
この純資産は当期利益(もしくは欠損)は除きますので、期首の時点で判断することになります。
決算になって、「今期は交際費使えませんでした」となるのは最悪です。
医療法人は利益の配当ができません。
設立当初は交際費が使えていても、期を重ねるごとに上記の算式をクリアすることが難しくなります。
どこかで切り替えの期が来るわけです。
ご注意頂きたいのが、前期の時点では既に「来期は交際費が使えなそうだな(=算式に当てはまる)」ということが分かるということです。
さらに、今後の利益を試算して見込むことで、あと何期経つと交際費が使えなくなるという予測も立てることができます。
令和6年度税制改正の影響
これらの取り扱いに令和6年度が影響します。
従来、1人当たり5千円以下の場合には、これらの交際費の取り扱いには含まれず、そのまま経費になっていました。
「交際費課税に含まれない交際費」ともいえるわけです。
改正により、この5千円という基準が1万円に引き上げとなりました。
喜ばしいことですが、実務上、先生方は1人1万円以下のお店にはほとんど行かれていません。
あまりメリットはないかもしれませんが、特に持分なしの先生はこの1万円の基準を頭に入れておいても良いかもしれませんね!