病院やクリニックの節税にはソフトウェアが良い!Q165
こんにちは。
「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。
各種の節税対策がありますが、悲しいことに「医療機関はダメ」というものがかなりあります。
節税対策には国の意向が存分に反映されますが、政策で誘導したい業種ではないのかもしれません。
医療機関の「良い時代」を引きずっているかのようです。
ただし、「ソフトウェア」に関しては一般の事業会社と制限なく、節税対策が取れますので、しっかり節税しておきたいところです。
具体的には、「文章や表計算、給与や経理といったソフトウェア」が該当することになりますが、病院やクリニックで置き換えると「電子カルテや調剤システム、電子薬歴システム」等が該当します。
特に、クリニックの先生は「電子カルテ」を意識しておきましょう!
それでは、「ソフトウェア」を取得した場合の節税策を解説していきます。
節税策をご紹介した後に、「対象となるのはこの資産です」という流れよりも、「ソフトウェアで使える節税策」という資産名を入り口にした切り口の方がわかりやすいかと思います。
※この記事は次の人にオススメです。
・ソフトウェアを取得した際の節税策を整理したい病院やクリニックの先生
中小企業経営強化税制
70万円以上のソフトウェアが対象になります。
(1)即時償却
(2)税額控除7%(出資金3千万円以下or個人開業医の場合は10%)
どちらか好きな方を適用することができます。
通常は(2)の税額控除を選ぶことが多いと思います。
病院やクリニックの場合、比較的利益が安定していますので、翌期以降の減価償却費がなくなってしまう(1)即時償却については、そのデメリットの方が強いためです。
例:400万円の電子カルテの場合
(1)即時償却
適用年度の400万円が経費になりますので、それに税率をかけた分だけ節税になります。
(2)税額控除
出資金3千万円以下or個人開業医の場合には、400万円×10%=40万円が節税になります。
これとは別途、通常通り減価償却費を経費にすることができます。
医療機関の場合、前述のとおり、こちらの方が有利になることが多いです。
中小企業経営強化税制の注意点
(1)対象者
中小企業ということで、「出資金1億円以下、持分なしであれば従業員1,000人以下」となります。
あまりないかと思いますが、規模の大きな病院は注意が必要です。
下記の中小企業投資促進税制も同様です。
(2)手続き
経営力向上計画の認定を受ける必要があり、ボリュームはないのですが、申請書類を作って提出する必要があります。
基本的には申請→受理・認定→取得といった流れが決まっていますので、スケジュール立てが重要になります。
こうした点から下記の「中小企業投資促進税制」の方が使いやすいと思います。
(3)リース
所有権移転外リースであれば、税額控除のみ適用OKです。
取得していないため、即時償却はできません。
リースについては下記の中小企業投資促進税制も同様です。
中小企業投資促進税制
こちらも70万円以上のソフトウェアが対象になります。
(1)特別償却30%
(2)税額控除7%(出資金3千万円以下or個人開業医の場合はのみ)
どちらか好きな方を適用することができます。
通常は(2)の税額控除を選ぶことが多いと思います。理由は前述通りです。
また、税額控除の「%」が下がっていること、そして、より小さな病院やクリニックのみが税額控除の対象になる点に注意が必要です。
ただ、実務上はほとんどが出資金3,000万円以下になりますので、税額控除が使えなくて困る・・・ということはあまりありません。
中小企業投資促進税制とどちらを選ぶか
それでは、70万円以上のソフトウェアを取得した場合、どちらを選べば良いのでしょうか。
目の付け所をまとめていきたいと思います。
(1)基本は税額控除有利
中小企業投資促進税制→中小企業経営強化税制の順で適用を受けることになります。
そして、控除できるのは両方の合計で当期の法人税(個人開業医は所得税)の20%が上限となります。
さらに、控除しきれなかった金額は翌期に限り、繰越して控除することができます。(翌々期は不可)
(2)当期の資金繰りが厳しいのであれば即時償却または特別償却30%
病院やクリニックで使う電子カルテ等を前提としていますので、資金繰りを悪化させるほど高額にはならないと思います。
ただ、他の要因によって厳しくなっているのであれば、今期の資金繰りを最優先して即時償却や特別償却の方が有利にならないか、試算しても良いと思います。
大まかな流れになりますが、このような感じの目付で良いと思います。
まとめ
今回は「ソフトウェア」という切り口から2つの節税策をご紹介しました。
いずれにしましても、ソフトウェアは病院やクリニックにとって、重要な節税のチャンスです。
逃さないようにしっかり節税してください!
※中小企業投資促進税制については以前の記事で個別に解説していますので、こちらもご覧ください。