遺産が分割できない未分割は避けるべき理由!
こんにちは。
「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。
相続財産を相続人の間で分けることができない状態を「未分割」といいます。
「うちはみんな仲が良いから大丈夫」
「うちは揉めそうだよ」
先生方の反応もさまざまです。
揉めないことに越したことはありませんが、「分割できないとどういうデメリットがあるのか」ということは押さえておきましょう。
これを知っていると、「こういうデメリットが生じてしまうから、みんなで合意できるように話し合いをしませんか」という「落とし所」になったりもします。
それでは今回は、「相続財産が未分割となるデメリット」について、まとめていきたいと思います。
※この記事は次の人にオススメです。
・相続財産の分割が確定していない人
・相続財産を上手に分割したい人
分割できないままで申告する場合
まず、相続税の申告期限までに遺産分割協議が整わない場合には、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して申告します。(=「当初申告」とします)
分割されていないわけですから、申告のしようもないように思いますが、簡便的に「法定相続分」通りに分割したと仮定して申告することになります。
そして、実際に申告期限後3年以内に分割協議が整った場合には、分割協議成立を知った日の翌日から4ヶ月以内に更正の請求、または修正申告をすることができます。
(1)当初申告より税額が減少した相続人→「更正の請求」という手続きを経て、相続税の還付を受けることができます。
(2)当初申告より税額が増加した相続人→「修正申告」という手続きを経て、相続税を追加納税することができます。
ただし、(1)の相続人が更正の請求をした場合には、(2)の修正申告は義務となります。
それでは、なぜ任意なのでしょうか。
それは、基本的に国が徴収する相続税額は変わっていないためです。
例えば、相続税総額が1億円であり、当初の税額が下記のようだったとします。
・Aさん5千万円、Bさん5千万円
これが遺産分割協議が整い、下記のように変化したとします。
・Aさん6千万円、Bさん4千万円
結果として、「Bさんは1千万円還付してもらい、Aさんは1千万円追加納税する」
こうイメージしやすいかと思いますが、国にしてみれば同じ1億円の納税です。
そのため、Bさんさえよろしければ、更正の請求も修正申告も必要ありません。
逆に、Bさんが更正の請求をする場合には、国としても還付だけして終わりというわけにはいきませんから、Aさんにも修正申告の義務が生じてきます。
未分割だと特例が使えない
通常の相続税申告と未分割状態での相続税申告では、どう違うのでしょうか。
大きな特例2つが使えないことになります。
(1)配偶者の税額軽減
配偶者に対し、法定相続分か1億6千万円までいずれか多い方まで、税額軽減を認めるものです。
(2)小規模宅地等の特例
※小規模宅地等の特例については、こちらの記事でご確認ください。
自宅の土地についてはこちら
事業用の土地についてはこちら
「Q47 病院で使う事業用の土地も80%評価減になるのか?」
どちらも、税額への影響(効果)が大きいものになります。
ぜひとも、適用を受けたいものになりますが、未分割状態の当初申告時点では受けることができません。
その後、3年以内に分割協議が整った場合には、これらの適用を受けることができますが、この特例2つの適用を受けることができないため、当初申告での税額は大きいものとなってしまいます。
3年を超えてもまだ遺産の分割ができない場合
完全に揉めているケースでは、3年かかってもまだ未分割という可能性があります。
その場合には、申告期限後3年を経過する日の翌日から2ヶ月以内に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出して、税務署長の承認を得る必要があります。
ではこの要件となる「やむを得ない事由」とは、どのようなものでしょうか。
基本的に、「訴訟中・調停中」である状態を指します。
単に、「話し合いの時間が取れなくて・・・」という理由は認められません。
最長でも、3年以内での分割を目指し、できれば、申告期限まで分割できるようにしましょう。
ポイントは簡単で、事前に分割を決めておくことです。
被相続人が健在のうちに、相続人間で分割方針を決めておくことです。
急な相続の場合には難しいかもしれませんが、実際に相続が起こってから話合いを始めると申告期限までに決まらない可能性が高くなります。
まとめ
顧問税理士がついていれば、財産の分割が決まっていないということはないと思いますが、生前からしっかり道筋を立てておくことが重要です。
年に1度でも良いので、そうした時間を定期的に設けるようにしましょう。
税理士立ち会いのもと、避けられる争いは避けられるようにしてあげるのが、被相続人の務めなのではないでしょうか。
顧問税理士からお声がけしますので、しっかり相続対策をしていきましょう!