個人事業者の事業用資産に係る納税猶予は開業医に使えるのか?

 

※最終更新日:2020年5月1日

昨年の税制改正によりできた個人事業者向けの相続税と贈与税の納税猶予制度

個人事業者ではなく、法人向けの納税猶予制度はありましたが、医療法人は適用の対象外となっていました。

そこで、医療法人については、認定医療法人制度を絡めて、相続税や贈与税の納税猶予がありましたが、やはり、個人開業医にはありませんでした。

とは言え、個人開業医が事業承継を考える場合には、医療法人になるケースがほとんどで、事前準備に時間が取れれば基本的に困ることはありませんでした。

個人開業医が医療法人成りする大きな理由は、「節税」と「事業承継」です。

事業承継を見据えての医療法人成りは今までもたくさんお手伝いさせていただきました。

この制度は相続でも贈与でも適用できますが、実務上多くなると想定される相続の場合を前提に見ていきましょう。

※この記事は次の方にオススメです。

個人開業医でこの制度の適用を検討している方

具体的な納税猶予額の計算方法を確認したい方

事前準備ができないケースも

ただし、個人開業医である父が突然亡くなられてしまったようなケースはどうでしょうか。

急いで医療法人成りというわけにもいきません。

相続人であるお子様には、相続や相続税の問題が出てきます。

その中にはもちろん、個人開業医である父の「事業用資産」も対象になってきます。

そこで、この「個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度」の出番となる・・・というケースが1番多くなると思います。

後継者にも要件はあり、認定申請時までに「開業届」や「青色申告の申請」を提出していること、そして、「先代の事業に従事していたこと」等があります。

「すでに一緒に働いていないとダメ」なように見えますが、同じ事業種や類似事業(医療と介護など)、大学生(医学部)でも「先代の事業」に該当しますので大丈夫です。

制度概要

事業承継について認定を受けた相続人(後継者)が、相続で事業用資産を取得し、その事業を承継していく場合には、納付すべき相続税のうち、事業用資産に係る分の相続税の納税を猶予するというものです。

逆に言いますと、事業用資産以外のプライベート資産に係る相続税は納税猶予となりません。

あくまでも、事業の承継を目的とする制度であるためです。

そして、特例事業用資産とは下記のものを言います。

土地(400㎡限度)

建物(床面積800㎡限度)

減価償却資産(固定資産税や自動車税等の課税対象になっているもの)

事業用である証拠として、青色申告の貸借対照表に計上されているものになります。

手続きも少々面倒です。

(1)都道府県に「個人事業承継計画」を提出

原則は相続又は贈与前に都道府県知事の確認を取っておく必要がありますが、令和6年3月31日までの相続又は贈与については、相続又は贈与後でも良いことになっています。

(2)納税猶予の適用を受けた後は、申告期限後3年経過ごとに「継続の届出書」を提出

忘れないように注意しましょう。

計算方法

(1)まず、通常の相続税を計算する

(2)特例事業用資産のみを相続したと仮定して相続税の計算をする(この部分の金額が納税猶予となります)

事業用の債務があれば、特例事業用財産の価額から控除した純額でOKです。

後継者でない相続人は通常通りの相続税計算となりますので、(1)と同じ課税価額を合算してください。

後継者である相続人の非事業用資産のみ対象外とするイメージです。

(3)(1)-(2)=納税額

そして、猶予された税額は下記の要件にて免除されます。

①贈与者が死亡した場合

②贈与者よりも先に受贈者(後継者)が死亡した場合

③受贈者がさらに次の後継者に全てを贈与した場合(申告期限から5年を経過する日後)

免除税額の計算方法は変わりますが、第3者への譲渡や贈与でも免除になります。

小規模宅地等の特例は有利な方を選択すべし

この適用を受けることができる事業用の宅地についても、別途、80%の評価減を受けることができる特例(小規模宅地の特例)もあります。

これはいずれか選択適用となりますので、必ず試算の上、有利な方を選択するようにしてください。

ただし、80%の評価減の方は、課税価額全体を下げる効果があるため、後継者でない相続人の相続税も減少します。

それに対し、納税猶予は後継者のみ税メリットがある制度です。

基本的には、土地については小規模宅地等の適用を優先して適用して良いと思います。

後継者である相続人の有利不利のみならず、全体を見て有利・不利の判断をするようにしましょう。

事業用宅地等の特例は、こちらの過去ブログでご確認ください。

Q47「病院で使う事業用の土地も80%評価減になるのか?」

まとめ

いかがでしたでしょうか。

特例事業用資産の価額が大きい場合には、納税猶予額も大きくなります。

相続財産で1番怖いのが、課税価額が大きく、かつ、換金性がない土地です。

その土地が事業用資産のみであれば相続税の大部分を猶予できることになりますが、事業用でない土地(ご自宅の土地など)があることも多いと思います。

その部分はこの制度では猶予を受けることができませんが、居住用宅地に対する別の特例がありますので、そちらの適用をご検討ください。

居住用宅地等の特例については、こちらの過去ブログでご確認ください。

Q46「自宅の土地は80%評価減とは限らない?」

個人用の納税猶予制度ができ、救われる先生もいらっしゃるかとは思いますが、やはり、医療法人成りに代表されるように、計画的に準備をしていくことが王道の対策になります。

後回しにせず、少しずつ準備を進めていきましょう。

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