病院経営に必要な病院経営管理指標の3つの指標とは?
最終更新日:2020年5月13日
こんにちは。
「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。
前回のQ8「医療機関で実施すべき財務分析と非財務分析とは?」では、病院経営における財務分析から始まる経営改善のループについてお話ししました。
経営の課題解決と目標設定に役立つ重要なスキルになりますが、具体的に何が見えてくるのでしょうか?
また、病院経営やクリニック経営において、その経営状況の調べ方にはどういったものがあるのでしょうか?
そこで今回は、これらの悩みを解決してくれる「病院経営管理指標」を用いて、経営状況の調べ方について解説していきます。
※この記事は次の人にオススメです。
・病院経営管理指標を経営分析に役立てたい人
・病院経営の経営状況の調べ方がわからない人
一般的な5つの指標
一般的な財務分析で見えてくるものは、下記の5つと言われています。
①収益性・・・儲かっているか(例:経常利益率)
②安全性・・・借入金の返済原資はあるか(例:自己資本比率)
③機能性・・・病院としての質はどれくらいか(例:平均在院日数)
④生産性・・・効率よく経営できているか(例:職員1人当り入院患者数)
⑤成長性・・・前期よりも増収増益となっているか(例:医業収益増加率)
この5つが経営における重要な5つの要素であり、経営者として常時確認しておくポイントです。
病院は3つの指標
ですが、違和感もあると思います。
特に⑤に成長性です。そもそも、病院とは毎期増収増益となるのでしょうか。
売上と利益のバランスを取ることが大切なのであって、民間企業のようにシンプルに増収増益を目指すだけではないと思います。
また、④生産性においても、工場のように、製品が相手の仕事であれば、社員1人あたりの生産性(時間あたりの売上高など)は追求すべきですが、病院の場合には患者さん相手ですので、生産性だけを最優先にはできないと思います。
そのため、厚生労働省が毎年発表している「病院経営管理指標」においても、この成長性は入っておりませんし、生産性は収益性の一部に取り込まれています。
結果として、①収益性 ②安全性 ③機能性 の3つを抑えておけば大丈夫です。
財務分析の位置付け
(1)財務分析
①収益性と②安全性は共に財務諸表に表れるため、この2つが医療版の財務分析となります。
こう考えると一般企業よりもシンプルになります。
(2)非財務分析
③機能性は財務諸表に表れません。
つまり、非財務諸表となりますが、医療機関で働く皆さまには非常に馴染みのあるものかと思います。
(3)(1)+(2)=経営分析
財務分析と非財務分析を合わせたものが経営分析となります。
財務諸表に表れるもの、表れないもの、両面をカバーし、総合的に経営判断ができるようになります。
まとめ
専門外と思ってしまいがちな財務分析もこうして体系化してみると意外とシンプルな構造になっていることに気づくと思います。
次回以降、具体的な各要素について見ていきますが、まずは収益性・安全性・機能性の3つの視点に分けて考えることが大切です。
※収益性についてはこちらの記事へ
※材料費比率についてはこちらの記事へ
「Q49 病院やクリニックの材料費比率をどう経営に活かすか?」
※人件費比率についてはこちらの記事へ
「Q50 病院やクリニックは人件費比率をどう経営に活かすのか?」
※安全性についてはこちらの記事へ
「Q51 病院経営やクリニック経営の安全性はどう判断するか?〜流動比率〜」
※設備投資についてはこちらの記事へ
「Q52 病院やクリニックの設備投資の可否に使う〜固定長期適合率〜」
※借入限度額についてはこちらの記事へ
「Q56 病院やクリニックの借入はいくらまでできるのか?〜償還期間〜」
※自己資本比率についてはこちらの記事へ