開業医の確定申告はここがポイント〜消費税の課税漏れまとめ〜
(最終更新日:2020年4月22日)
今回は同じ税理士をしている友人から受けた相談です。
「個人開業している先生に講演料収入があったから、確定申告しようと思う。だけど、消費税も申告が必要なのかな?」というものでした。
答えは、「講演の中身によって、取り扱いが違う」ということです。
これ以外にも、個人開業医の確定申告には、医療特有の論点がたくさんあります。
そこで今回は、「個人開業医の確定申告」の中から、間違えやすい消費税の論点をまとめて解説していきます。
※この記事は次の方にオススメです!
・消費税の課税事業者である開業医の先生
・開業医の確定申告をする税理士の方
消費税の課税の範囲
そもそも、消費税は基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると課税義務が生じます。
個人開業の先生の場合、2年前のことです。2019年分であれば、2017年分の課税売上で判定します。
それでは、課税売上とは何でしょうか?
主に自由診療収入のことです。保険診療収入は非課税です。
※課税の判定は、過去のブログ「Q3医療機関の消費税は課税・非課税の区分がポイント?」でお話ししていますので、そちらをご覧ください。
診察部分は保険・自費に区分すれば良いだけなのですが、先生方の収入はそれだけではありません。
間違えやすいのが、「事業に付随して行われるようなものも課税対象になりうる」という点です。
先生方に気をつけていただきたいのは、次の2点です。
①事業で使っている医療機器や建物などの売却
②自らの専門的知識に基づくもの
この2点も消費税の課税対象になりますので、確定申告では消費税の確定申告に含める必要があります。
つまり、冒頭の相談についても、「医師としての専門的知識に基づくもの」であれば課税売上になり、そうでなければ課税対象にはならないということになります。
実務上、ほとんどの場合が「医師としての専門的知識に基づくもの」になりますから、講演料は課税売上として考えておく必要があります。
私も他の税理士事務所で行われた確定申告書を後日チェックすることがありますが、課税漏れになっているケースが散見されますので注意しましょう。
※そもそも、免税事業者である先生は、これらの金額も含めて、1,000万円を超えないか、判定してみてください。
課税漏れに注意
つまり、冒頭の相談に対する回答ですが、「先生がした講演が病気や健康などに医師であることに由来するものであれば、課税対象になりますし、逆に、先生のプライベートや趣味などの知識に基づくものであれば、課税対象外となります。」ということになります。
消費税法の「事業」という考え方は所得税法の「事業」よりも広く、別の考え方になります。
具体的には、所得税の「事業所得」だけが課税対象になるわけはなく、「雑所得」も課税対象になりうるわけです。
また、上記①についても、事業用であれば課税対象となりますが、自家用車やご自宅の売却は事業ではありませんので、課税対象外となります。
事業用資産を売却して所得税の確定申告をするだけではなく、売却収入(=自動車であれば下取り価格)が消費税の課税売上として消費税の申告に関係してきます。
この点は確定申告の計算上、課税漏れを起こしやすい論点になりますので、ご注意ください。
医療法人に対して、資産を出資したケースにご注意
もうひとつ、個人開業医の先生が医療法人成りした時によくやってしまうミス事例もご紹介します。
消費税の課税対象と聞くと、自由診療収入をイメージされると思います。
もちろん、1番のメインはそこになりますが、目立つ分、課税漏れ・課税忘れにはなりにくい部分でもあります。
意外な課税対象・・・それは、「医療法人に出資した財産」が課税対象になるという点です。
個人開業医が医療法人を設立する時に、今まで使っていた医療機器や建物・内装等を出資することはよくあると思います。
その際、設立した医療法人に対する「出資」を取得するわけですが、これが出資を対価とした消費税の課税対象となります。
そして、取得した「出資」は、消費税上、不課税の仕入れとなります。
医療法人の設立において、動産・不動産・債権などの金銭以外の財産を出資する際はご注意ください。
医療法人の設立年は、一生に一度の申告になりますので、間違いのない申告をしたいですね。
まとめ
「事業」については、他にも、市区町村から委託される休日診療なども、事業に含めて課税対象として計算するものと、「給料」に該当し、事業には含めず課税対象外となるものがあります。類似論点としてご注意ください。
また、薬品や診療材料、事業用の資産をご自身や職員様のために、プライベート使用した場合がありましたら、例え、誰からも対価を得ていなかったとしても、課税対象となりますのでご注意ください。
医師の確定申告には、こうした医療特有の論点がたくさんあります。
思わぬ納税漏れや反対に二重課税が起きないように、医療専門の税理士にご相談ください。