将来の医療法人M&Aについて、今知っておくべきこととは

 

こんにちは。

「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。

このコロナ禍の影響もあり、廃業される先生が増えてきているようです。

数年後に引退しようと考えていたご年配の先生が、その引退時期を早めたような形の廃業が目立ちます。

ただ、開業医の先生方の本格的な引退年齢のピークはこれからだと言われています。

「売れるんだったら、売りたいな」

「売却代金が入ることよりも、医院を引き継いでもらいたい」

こうしたお考えから、「M&A」という選択肢が目に入っている先生も多いと思います。

そこで今回は「医療法人のM&A」が将来の選択肢のひとつにある先生に向けて、その大まかな流れや売却のコツ等を中心に解説していきます。

前提は医療法人ですが、解説のほとんどの部分は個人開業医の先生にも当てはまるものになりますので、個人開業医の先生も安心してお読み下さい。

これを読めば、自院の将来がより鮮明になってくると思います。

※この記事は次の人にオススメです。

「医療法人のM&A」について、イメージをしっかり持ちたい人

医療法人のM&Aの全体像

あくまでも、事業承継を前提に売り手に立って全体像を見ていきます。

(1)買い手の選定

実務的には、専門の仲介会社に「買い手の選定」を依頼します。

買ってくれる先を探してもらうことになります。

(2)基本合意書の締結

良い買い手が見つかり、納得できたら「基本契約」に合意します。

(3)デューデリジェンス(以下DD)の実施

DDと呼ばれるチェックを行います。

財務・会計・法務等がメインとなりますが、売り手の状況に応じて人事等まで幅広く行います。

買うに値する医療法人であるか、正式にチェックが入ります。

(4)持分譲渡契約書の締結

「持分ありの医療法人」を前提としてますが、実務上1番多いのが、「出資持分を譲渡して社員交代する形」です。

M&Aのために持分を譲渡することになりますので、その契約を正式に締結します。

ちなみに、「持分なしの医療法人」の場合、譲渡する持分がありません。

そのため、事業を譲渡する「事業譲渡」という形を取ることになります。

事業譲渡の譲渡対価は先生個人には入らず、医療法人に入り、そこから退職金として引き出す流れが一般的です。

 

以上、大きく分けて、この4つのステップを踏んでいくことになります。

先生方が1番気を揉まれるのが、(1)だと思います。

財務状態の良い医療法人の場合、本当にピンからキリまで買い手が現れます。

譲渡対価の高い買い手が魅力的に写りますが、法人理念や将来のビジョン等、しっかり判断するようにしましょう。

売って終わりではない

大事なことは、売って終わりではないということです。

「持分ありの医療法人」を前提としますが、譲渡した持分の対価が先生に入ってきます。

そのことは良いことですが、当然に将来の相続財産となります。

引退を前提としたM&Aであれば、相続までの期間も短くなるために、事前に対策を取っておく必要があります。

具体的には売却対価という「現金」から「相続税評価の低い不動産」への組み換えがあります。

それ以外にも、個人から法人への資産移転として資産管理会社の設立なども挙げられます。

いずれにしましても、M&Aがゴールではなく、その先までプランニングしておく必要があります。

売却を焦らないこと

以前ご相談のあったお客様で、譲渡対価を10万円として提示された歯科の先生がいらっしゃいました。

財務状態がそれ程良くないこと、歯科が過当競争であること、院長先生が変われば多くの患者は離れてしまうこと、などがその理由でした。

譲渡対価は、歯科機材の買取価格ということでした。

最終的には他の買い手が現れて、1,000万円程で売却することになりました。

慌ててはいけないということです。

ご注意頂きたいのは、この視点は他の医療機関にも当てはまるということです。

そのためにも、まずは財務状態が良いことは重要な評価ポイントです。

上記院長先生交代の件も、突然お亡くなりになられてしまった場合は別ですが、引継ぎ期間を設けておくなど事前の準備や告知が大切です。

中小病院や診療所のM&Aについては、顧問税理士に相談されるケースがとても多いようです。

将来の事業承継としてのM&Aをどう考えるか、顧問税理士と相談してみましょう!

 

※M&Aについては、過去記事でも解説していますので、こちらも併せてご覧ください。

Q127「医療法人のM&Aとは(持分ありと持分なし)