院長個人の土地を医療法人へ貸す相続税対策とはQ142
こんにちは。
「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。
クリニックの場合は特に、院長先生(理事長先生)個人と医療法人は非常に近い存在です。
ご自身所有の土地を医療法人やMS法人へ貸している、または、これから土地を購入して医療法人等へ貸すつもりだという先生が多くいらっしゃいます。
相続税対策や親族への所得分散などの目的で行われることが多いものになりますので、改めてその効果や課税上の取り扱いをまとめてみたいと思います。
※この記事は次の人にオススメです。
・先生個人と医療法人等の間で土地の賃貸がある人(またはこれから行おうという人)
権利金等の収受がある場合は
権利金等の収受がある場合とない場合があります。
まずは、ある場合から見ていきましょう。
(1)先生個人
①相続税・・・貸宅地となりますので、土地全体を所有していた時と比べて評価額が下がり、相続税の節税になります。
②所得税・・・譲渡所得(更地価額の1/2超)または不動産所得(更地価額の1/2以下)となります。
借地権を譲渡したことにより、所得税の負担が増加することが税務上のデメリットといえます。
その反面、法人から地代収入が入ることになり、将来の安定収入とすることができます。
先生がリタイアした後、医業収入以外の収入源を得ることができるというメリットがあります。
(2)法人側
支払った権利金等が資産となります。
今後、地代を先生個人へ払っていくことになります。
法人からお金が出ていくことになるので、資金繰り上はデメリットかもしれませんが、個人へ移すことができると考えるとメリットとなります。
その場合の地代は、実務的には「固定資産税・都市計画税の3倍程度」といわれています。
ただ、こうした同族関係者間では適性地代の根拠が曖昧になりがですので、近隣相場から逸脱しないようにご注意ください。
権利金等の収受がない場合は
原則として、権利金等相当の経済的利益を得たとして、贈与税の課税対象となります。
実際に現金を得た訳でもないのに、課税されると大変です。
そこで、以前も解説した「相当の地代の支払」と「土地の無償返還の届出書」という2つの方法があります。
今回のメインは上記の権利金等の収受がある場合ですので、下記の解説ブログの方をご覧ください。
実務上、ミスが多いのは「同族会社に対して土地を貸し付けている場合(賃貸借)」です。
借地権が計上されていないので忘れがちですが、出資持分の評価上、純資産価額に借地権20%を計上する必要があります。
(反対に、先生個人の底地の評価は80%となります。)
・Q 132「借地権として課税されないための無償返還の届出とは?」
いずれにしましても、借地権についてはその課税関係や認定が曖昧になりがちです。
狙い通り相続税対策とするためにも、しっかりとしたプランニングが重要になります。
信頼できる専門家にご相談の上、確実に計画・実行するようにしましょう!