医療法人経営情報データベースは機能するのかQ 188

 

こんにちは。

「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。

令和5年8月決算の医療法人から新しい報告制度がスタートしていることをご存知でしょうか。

「事業報告書は毎期提出しているよ」

先生がご認識の「事業報告書」に追加して、新たな書類作成とその提出義務が生じています。

当事務所においても、早速、8月決算の顧問先様から作成し始めています。

そこで今回は、新たにスタートした「医療法人経営情報データベース」について解説していきます。

※この記事は次の人にオススメです

・医療法人を経営する先生

医療法人経営情報データベースとは

従来からある「事業報告書」に加え、医療法人の経営情報を収集し、データベース化することで、医療法人の正確な経営情報を把握しようとするものです。

なぜ、このようなものが必要になったのでしょうか。

最大の要因は、コロナ対策としての補助金等の交付にあります。

この補助金等の交付が適正だったのか、効果があったのか、もしくは過剰だったのではないか。

効果測定が必要ですが、従来の「事業報告書」では概要すぎて、詳細な分析はできませんでした。

そこで、より詳細な経営情報を集め、それをデータベースにして活用しようということです。

提出するのは様式1か様式2

実際に提出することになる「様式1(病院用)」「様式2(診療所用)」を見てみます。

※各都道府県のHPにアップされていますので、お手隙の際にご確認ください。

確かに細かくなっています。

下記の報告が必要になっています。(一部抜粋)

(1)医薬品費・診療材料費

(2)役員報酬

(3)給料・賞与

(4)水道光熱費

(5)補助金収益

特に、役員報酬は「報告したくないな」という反応の先生が多い印象です。

経過措置はあるが

ちなみに。初回報告(令和5年8月1日〜令和6年7月31日)については、「様式1−2(=病院用)」と「様式2-2(=診療所用)」という「ー2」がついた様式でもOKになっています。

違いは「任意回答」でOKな項目が多い点です。

初年度ということで、回答義務の範囲が狭くなっています。

対応はどうするか

各様式にある「職種別給与総額」の作成はかなり手間だと思います。

給与データということで、社労士と契約している医療法人はこの作成を委託することもあるかと思いますが、別途報酬をお願いされるかもしれません。

一人医師医療法人の診療所(分院なし)であれば、職種別といっても「医師・看護職員・事務職員」くらいですので、対応できるかもしれませんが、病院や分院のある診療所はどうでしょうか。

ちなみに、報告は医療法人全体で1個ではなく、「病院単位」・「診療所単位」です。

数あるところはかなり大変だと思います。

皆様、任意回答のところはどうするのでしょうか。

個人的には、回答されない医療法人が多くなると予想していますが、それだとデータベースとして機能しません。

将来的には、回答義務項目ばかりになるのではないでしょうか。

報告自体はしないと罰則がありますので、報告数は上がると思いますが、実際のデータベースの機能としてどうなるでしょうか。

まだ8月決算の医療法人からスタートしたばかりです。

今後の動向に注意していきましょう!