医療機関の事業承継は事業譲渡という方法もありか?Q164

 

こんにちは。

「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。

近年、医療機関の事業承継はM&Aという形が増えてきています。

それがこのコロナ禍において、さらに加速している印象です。

本当はあと数年頑張りたかった先生が、前倒しで承継している印象です。

弊所にも「顧問先で医療機関の買収を検討している先はございませんか?」という電話がよくあります。(なぜが関西が多い。笑)

後継者不足に悩む先生の事業承継の選択肢として、しっかり根付いてきています。

その具体的な方法として圧倒的に多いのが、「出資持分の譲渡(+役員退職金の支給)」という形です。

※以前のこのブログでも解説しています。

Q69「医療法人の高い出資持分を引き下げる方法と意外な落とし穴

 

Q137「医療法人の出資持分を譲渡して税引後手取りを最大にする方法

ただし、当然のことながら、持分あり医療法人は新設できないわけですから、持分なしの医療法人の比率が高まっています。

そこで選択肢として増えてくるのが「事業譲渡」という形式です。

そこで今回は事業承継における「事業譲渡」という方法のポイントを解説していきます。

※この記事は次の人にオススメです。

・病院やクリニックの経営者で事業承継を検討中の先生

・持分の譲渡ではなく、事業譲渡という方法を検討したい先生

病院やクリニックの事業譲渡の基本

事業譲渡とは、そのままですが「事業を譲渡すること」であり、事業に関する個別の資産と負債を譲渡する方法です。

株式会社の場合には、A部門・B部門・・・などあるときに、業績の良いA部門のみを譲渡し、そこで得た資金で業績の悪いB部門の立て直しを図ることがあります。

反対に、業績の悪いB部門を譲渡し、A部門に集中することで会社全体の利益率の向上を目指します。

ただし、医療機関の場合は部門や施設を切り出して譲渡することよりも、全体を譲渡し、売り先の先生はそのまま引退されるケースが多くなります。

医師という専門的な立場が求められ、株式会社よりも事業承継が難しくなるため、こうした事業全体の承継方法が求められるためです。

医療機関が行う事業譲渡の留意点

譲渡代金は法人に入金されます。

あくまで法人の事業を譲渡することになりますので、法人自体を譲渡するわけではありません。

売り先の病院やクリニックの理事長先生や院長先生個人に入金されるわけではありませんので、事業譲渡前に役員退職金の支給を受けておく等、引退後の資金をしっかり確保しておく必要があります。

買う側の病院やクリニックの留意点

(1)簿外債務や過去の経営リスクを引き継がない

実務上よく行われている「持分譲渡」の形だと、経営自体を承継することになりますので、財務諸表に載っていない債務や経営リスクも承継することになります。(例:将来支払う退職金、未払の残業代、患者クレーム、税務調査の履歴等)

その点、事業譲渡の場合、あくまでもその病院やクリニックの資産と負債を買うだけですので、これらを承継することはありません。

(2)時価で受け入れることになる

資産と負債は時価で受け入れることになります。簿価(=財務諸表の金額)ではありません。

そしてその受け入れ時間と譲渡金額との差額は「資産調整勘定」と言われ、60ヶ月で償却されます。

(3)移転コストも試算すべき

資産を購入することになりますので、「不動産取得税や登録免許税」等の移転コストがかかります。

それ程大きな金額ではありませんが、事業譲渡の収支に影響がありますので、気を付けたいところです。

売る側の病院やクリニックの留意点

(1)譲渡損益が発生

譲渡した資産の時価と実際の譲渡対価の差額が譲渡損益となります。

承継というよりも売買というイメージだと思います。

(2)消費税も注意

譲渡した事業の移転に伴い、消費税が発生します。

見落としがちな論点ですが、消費税の課税取引になりますので、ご注意ください。

病院やクリニックにとっての事業譲渡とは

実務上は持分の譲渡がほとんどですが、将来的に持分ありの医療法人は減少していきますので、今後はこの「事業譲渡」というケースが増えてきます。

事業承継の一つの選択肢として活用できるよう、この「事業譲渡」についても専門家にご相談ください!

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