相続した土地等を売却して、相続後の税負担を減らす

 

こんにちは。

「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。

相続対策をする際、どこまで考えて対策を取っているでしょうか?

「税金と遺産分割の両方をしっかり考えて、分割しているよ」

こうしたご意見であれば、ひとまず安心できます。

顧問税理士と相談の上、税金と遺産分割までしっかりできれば、最低ラインはクリアできているといえます。

ただし、遺産分割で遺産を取得した後はどうでしょうか。

持っているままより、譲渡した方が良いケースも多々あります。

そこで今回は、遺産を取得した相続後において、とるべき優遇措置を2つ解説していきます。

※今回の記事は次の人にオススメです。

相続で取得した土地等の売却を考えている人

相続で空き家や居住用家屋を取得した人

相続後においても、しっかり対策を継続したい人

相続で取得した空き家やその土地は売却するべき

相続または遺贈により取得した被相続人が使用していた「ひとり住まいの古い建物や敷地」を譲渡すると、3,000万円まで非課税(特別控除)となります。

なぜ、このような制度があるかというと被相続人が使用していた「ひとり住まいの古い建物や敷地」は、放置されて問題になりやすいという現実があります。

更地にしてしまうと固定資産税も上がってしまいますし、かと言って、相続人にとって今の住居を手放してまで住みたいかというとそうではないことが多いと思います。

結果として、放置され、衛生上や防犯上の問題につながってくるため、国として売却を促す意味でこうした「譲渡の特例」ができています。

売却を促すのであれば、「簡単な要件にすればいいのに」と思いますが、適用要件はかなり多くなりますので、まとめていきましょう。

(1)ひとり住まいの古い建物や敷地とは

・旧耐震基準である昭和56年5月31日以前に建築され、区分所有登記されていないこと

・相続開始直前において、被相続人以外に居住していた人がいなかったこと

(2)売却方法

・家屋を売却or家屋とセットで敷地も売却or家屋を取り壊した後敷地を売却すること

・空き家であることが前提となるため、相続から売却までの間、事業用・貸付用・居住用に使っていないこと

(3)売却期間と売却価格

・相続開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること

例:令和2年7月9日に相続発生→令和5年12月31日まで

・売却代金が1億円以下であること

あまりにも資産価値が高額な空き家に対しては、非課税の特例はありません。

(4)売却先

あくまでも、第3者に対する売却が対象となります。

親子間や夫婦間などの特殊関係者は対象外となります。

空き家でなくても売却する恩恵はある

それでは、別のケースとして、被相続人と同居していた人が取得して、相続後売却した場合はどうでしょうか。

生前は一緒に暮らしていたものの、相続後、売却して別の場所で生活するようになるケースです。

もしくは、同居していなかった相続人が相続後に自分の住居として住む場合もあるかもしれません。

この場合どちらにも、3,000万円の特別控除(非課税枠:相続人1人辺り)があります。

同居しておらず空き家のままだった上記「空き家特例」と、この同居していたまたは居住用に使うことにした「居住用財産の特別控除」がどちらも3,000万円の特別控除ということもあり、間違えやすいのでしっかり区別しておきましょう。

(1)居住用財産の範囲

・同居していた家屋またはその家屋と共に売却する敷地

・住まなくなった場合には、その住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること

(2)売却先

あくまでも第3者に対する売却が対象となります。

親子間や夫婦間などの特殊関係者は対象外となります。

(3)軽減税率とセット

この規定自体は、居住用財産について所有期間は問われません。

ただし、所有期間が10年を超える場合には、軽減税率と併用で適用することができます。

・課税長期譲渡所得が6,000万円以下まで→10%(超える部分は通常通り15%)

ちなみに、今回ご紹介した「空き家特例」と「居住用財産の特例」は、同じ年に両方を使うことはできません。

両方使いたい場合には、売却する年を分けるようにしましょう。

相続後に売却する場合も特例がある

遺産分割で取得した相続財産について、ふたつ特例を紹介してきましたが、最後にもうひとつだけご紹介します。

空き家や居住用財産に関わらず、相続で財産を取得したものの所有し続けるのではなく、売却したいケースもあると思います。

その場合、納付した相続税のうち、一定の金額を売却した譲渡所得の金額の計算上、控除することができます。(譲渡益限度)

これを「相続税額の取得費加算」といい、売却によるもうけを圧縮して計算できるため、納税額も減少します。

(1)売却期間

相続開始があった日の翌日から相続税申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡すること

例:令和2年7月9日相続→令和6年5月9日まで

(2)対象者

相続または遺贈により財産を取得し、相続税が課税されている人

(3)対象資産

相続税の課税価格の計算に含まれている資産が対象となります。

相続開始前3年以内に被相続人から暦年贈与により取得し、相続税の課税価格に加算されたものであれば、この取得費加算の特例の適用を受けることができます。

まとめ

「遺産分割までしか、考えていなかったよ」

こうした人は多いと思います。

特に家屋のような資産価値の高いものは、保有しているだけでお金がかかりますので、取得後もしっかり対策したいものです。

また、譲渡の特例には適用できる期限がありますので、適用期限内で使うか使わないか、判断する必要があります。

分割決めて終わり・・・ではなく、分割後の使途までしっかりプランニングすることが大切です。

相続税を節税しても、また、分割協議をしっかりしても、その後の保有や譲渡で支出が増えたら意味がありません。

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しっかり最後まで、提案してもらうようにしましょう!