医療機関の節税対策として短期前払費用は有効か?Q 183
こんにちは。
「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。
多くの医療法人様が3月決算の5月申告かと思います。
ちょうど終わったところかと思いますが、納得感のある決算を迎えることができましたでしょうか。
「税金高いな」
そう感じる先生も多いと思います。
「経費を増やせばいいんだ」
こう考えて、経費をどんどん積もうとする先生もいらっしゃるようです。
その時によく議題に上がるのが「短期前払費用」の特例です。
簡単に言えば、直近1年分の経費を前倒しで計上することで、今期分と翌期分の実質2年分経費に入れることができるというものです。
代表例は、月払いだった家賃を年払いに切り替えることです。
翌期の家賃を年払いにして今期に経費計上し、翌期は翌々期の家賃を年払いすることで1年間分の経費を確保します。
つまり、効果があるのは最初の切り替えた事業年度のみです。
1度切り替えたら、継続していく必要があります。
すぐにまた月払いに戻すことは認められておりません。
これはミス事例が大変多い対策になりますので、今回はこの短期前払費用について解説していきます。
※この記事は次の人にオススメです
・節税対策を検討中の先生
医療機関の短期前払費用
これは「支払った日から1年以内に受ける役務提供に係るもの」を支払った時に、その支払った事業年度で全額経費計上が認められることになります。
(1)支払った日から1年以内
①家賃を2年分前払する
②3月決算において、翌期4月に1年分を前払い
③3月決算において、今期2月に1年分を前払い
文章にすると短いのですが、上記①〜③全て認めらません。
①→1年以内という要件に抵触
②→今期に支払ったという要件に抵触(=支払ったのは翌期)
③→1年以内という要件に抵触(=2月に支払ったので、4月〜翌年3月のうち、翌年3月は1年を超えてしまう)
細かい話ですが、仮に今期3月15日に支払うと翌年3月16日〜31日の半月は1年を超えることになりますが、超過部分が少ないこともあり、課税上問題ないと思われます。
(2)役務提供に係るもの
役務提供とは地代や家賃、保険料などを差しますので、物品の購入に関するようなもの(雑誌の定期購読料など)はそもそも対象となりません。
安易な経費の積み増しにご注意を
決算間際に慌てて駆け込みで使ってしまいがちな「短期前払費用」の特例ですが、かなりミスも多い対策になります。
決算書を2期比較で見た時に、「地代家賃」だけやたら膨らんだ上に、「前払費用」も大きくなりますので、とても目立ちます。
節税対策全般に言えることですが、決算間際に慌てるのではなく、早めに着地予測と納税見積を立てることで、事前にしっかりプランニングするようにしましょう!
備えあれば憂いなしですね。