医療法人の出資持分は遺留分侵害のリスク大!Q 187

 

こんにちは。

「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。

医療法人の出資持分を後継者に生前贈与している最中という先生も多いかと思います。

贈与する相手である「後継者」がいるだけでも、素晴らしいことです。

実務上は残念ながら後継者がいなかったり、いらっしゃっても持分はそのまま・・・というケースをよく見かけます。

今回は医療法人の出資持分を生前贈与することで、後継者ではない他の相続人に影響があることについて解説していきたいと思います。

実務上は「医師でないお子様」ということが多いと思います。

※この記事は次の方にオススメです

・医療法人の出資持分を生前贈与している(したい)先生

後継者以外の遺留分を侵害

具体的には、そのお子様の「遺留分」を侵害してしまうことがよくあります。

よくある分け方に、次のようなものがあります。

・後継者であるお子様→医療法人を「出資持分」を贈与

・その他のお子様→預金などの「プライベート財産」を贈与

財産の種類だけを見ると1つずつで平等に見えますが、実務では金額にかなりの差が生じることが多いのです。

設例に沿って、後継者でないお子様の遺留分を見ていきましょう。

例:子供A(後継者)に医療法人の出資持分1億円を生前贈与(相続開始9年前)。

子供B(後継者でない)には預金3千万円を相続させた。別途、相続時の債務は100万円あり。

(1)遺留分算定上の基礎となる財産

預金3,000万円+持分1億円※ー債務100万円=1億2,900万円

※10年以内の贈与は加算します

(2)子供Bの遺留分

1億2,900万円×1/2×1/2=3,225万円(全体の半分を子供間で均等にシェアするイメージ)

(3)遺留分の侵害額

3,225万円(遺留分)ー3,000万円(相続分)※+100万円(債務)×1/2(債務も均等に負担するイメージ)=275万円

※10年以上前の贈与もあればここでは加算します

後継者でない子供Bは、275万円を後継者である子供Aに請求することができます。

分かりやすくするために設例では金額を小さくしましたが、持分の評価は1億円では収まらないことが多いと思います。

比例して侵害額も大きくなりがちですので、事前に対策が必要です。

まとめ

こうして設例を見ますと、やはり後継者の出資持分の金額が大きいことで、後継者でないお子様に対して遺留分の侵害が生じています。

もちろん、金額が少なくても自由に使える預金の方が有難いということのあるでしょうし、事業を引き継ぐ兄弟へのリスペクトもあるでしょう。

大事なことは、この状態で相続させても良いのか、しっかり説明してあげることだと思います。

相続人であるお子様同士で揉めることがないように、遺留分の侵害までをフォローした相続のプランニングができると良いですね!