自宅を売却した時の確定申告特例まとめQ102

 

(最終更新日:2020年4月22日)

確定申告の受付が開始されていて、税務署の申告書作成コーナーも相談や還付申告の方を中心に、賑わってきているようです。

その確定申告で大きな税務上のポイントになるのが、「居住用財産」の取り扱いです。

そこで、今回は恐らく一生で1度か2度であろう、ご自宅を売却した時に適用を受けるべき「居住用住宅を売却した時の特例」をまとめていきたいと思います。

※この記事は次の方にオススメです!

ご自宅を売却したが、確定申告するか気になる人

売却したもうけが出ているので、課税上の優遇を受けたい人

売却した損失が出ているので、他の所得と相殺して節税したい人

儲けが出たか、出ていないか

まず、大原則として、居住用住宅を売却した時には、確定申告の対象になりうるという点です。

なりうる・・・というのは、税金計算上、「儲け(=所得)」が出ていれば税金を払うために確定申告するし、「儲け」が出ていなければ確定申告する必要はありません。

確定申告しない場合には、税務署は「儲けが出なかったために確定申告しなかった」のか、「単に忘れているだけ」なのか、判断がつきません。

そのため、後日、税務署からお尋ねの文書が来ますので、文面に沿って回答して頂ければ問題ありません。

算式:譲渡収入−(取得費+譲渡費用)=譲渡所得

大事なポイントは、「売却して儲けが出ているのか」「損が出ているのか」で受けることができる特例がガラリと変わることです。

(1)プラスの場合

譲渡所得が生じていますので、確定申告をします。

ただし、「居住用住宅」である場合には、「課税の特例」がありますので、特例を使って有利に計算するようにしましょう。

(2)マイナスの場合

譲渡所得は生じず、譲渡損になっています。

通常は上記でも解説したように、「確定申告不要」で終了ですが、居住用住宅の場合は特例がありますので、下記で見ていきましょう。

譲渡益の場合

譲渡したことによる売却益(=譲渡所得)には、通常15%の所得税(別途、住民税5%)がかかります。(その年1月1日における所有期間が5年以内であれば30%ですが、居住用ではそうした短期売却はあまりないでしょう)

居住用住宅の売却し、譲渡所得が出た場合の特例は下記の2つを押さえましょう。

(1)買換えした場合の特例(措法36の2)

居住用住宅を売却し、新しい居住用住宅に買い換えることもあると思います。

その場合に「課税の繰り延べ」を受けることができる特例です。

あくまでも「繰り延べ」ですので、永久的に節税になるわけでなく、買い換えた居住用住宅を売却した際に課税されます。

また、売却した価格が1億円を超える場合には適用はありません。

先生方のご自宅を売却した時には、意外とこのラインで引っ掛かることがありますのでご注意ください。

豪華な住宅へは適用がありませんので、下記(2)や(3)の適用を検討しましょう。

(2)特別控除3,000万円(措法35の1②)

譲渡所得は、3,000万円まで非課税となります。

3,000万円を超える譲渡益が出ること自体、実務上は珍しいので、非課税で完了というパターンになると思います。

ただし、確定申告をして適用を受けることになりますので、注意しましょう。

(3)税率の特例(措法31の3)

要件:土地・建物共に、譲渡年の1月1日における所有期間が10年超であること

税率:譲渡所得6,000万円まで10%(6000万円超部分は通常通り15%)

譲渡損の場合

反対に、譲渡損の場合には通常、「切り捨て」→「確定申告不要」となるところ、「居住用住宅」であれば特例の適用があります。

(1)居住用財産の買換え等の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(措法41の5)

上記、譲渡益の場合にもありましたが、「買い換える」という形もあると思います。

買い換えた上で、譲渡損が出た時の特例です。

その譲渡損を他の所得と相殺(=損益通算)できます。譲渡損が経費になるイメージです。

さらに、相殺しきれなかった場合には、来年に繰り越して、来年の所得と相殺(=繰越控除)できます。

とても高い節税効果がありますので、必ず適用を受けるようにしましょう。

注意点は下記の2つです。

買換資産に償還期間10年以上の住宅借入金があること

繰越控除を受ける年分については、所得金額の合計が3,000万円を超えないこと

あくまでも買換えによる負担の軽減を目的とするため、住宅ローンを組まずに購入できるような人(①)や、所得の高い人(②)には適用がありません。

先生方の申告の場合、実務上、②の所得制限で引っ掛かる場合も散見されますので、ご注意ください。

(2)特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(措法41の5の2)

居住用住宅を売却し、親や子供と同居する場合や賃貸住宅に住む場合など、買換えをしない場合もあると思います。

そうした場合の特例です。

(1)同様、損益通算と繰越控除の適用を受けることができ、高い節税効果がありますので、こちらもきちんと適用を受けるようにしましょう。

注意点を2点挙げます。

譲渡損の金額は、「オーバーローン(=譲渡価額を超える部分の借入金)」を限度とする

繰越控除を受ける年分については、所得金額の合計が3,000万円を超えないこと

譲渡収入から取得費と譲渡費用を控除した全額が「譲渡損」として、損益通算・繰越控除の適用を受けることができるわけでなく、

「住宅ローンから譲渡価額を控除した残額」が譲渡損の金額の限度になります。

例:譲渡損800万円(住宅ローン残高1,000万円・譲渡価額400万円)→600万円が損益通算・繰越控除の対象

例:譲渡損800万円(住宅ローン残高1,500万円・譲渡価額400万円)→800万円が損益通算・繰越控除の対象

(1)同様、負担の軽減を目的とするため、譲渡した住宅についてローンを完済している人(①)や、所得の高い人(②)には適用がありません。

ここでも所得制限が入りますので、先生方は注意が必要です。

住宅ローン控除との関係

これらの特例と住宅ローン控除の関係も重要です。

上記、譲渡益が出た場合の「買換え」「特別控除」「税率の特例」については、住宅ローン控除と重複して適用を受けることができません。

反対に、譲渡損が出た場合の「買換え」「譲渡」については、住宅ローン控除と重複して適用を受けることができます。

譲渡益と譲渡損で取り扱いが逆になりますので、注意しましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

居住用住宅の譲渡は、大きなお金が動くことになります。

そのため、各種の特例が設けられています。

また、一生のうち、何度も起こることではありません。

だからこそ、その各種特例をきちんと受けることが大切です。

信頼できる専門家から、確実なアドバイスをもらい、しっかり節税しましょう!