病院やクリニックの設備投資の可否に使う〜固定長期適合率〜

 

最終更新日:2020年5月14日

こんにちは。

「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。

「設備投資しようと思うだけど大丈夫かな?」

このようなご相談は大変よく頂くものです。

大丈夫というのは、資金的な裏付けのことです。

もちろん、キャッシュフロー計算書を確認し、今後の見通しや資金計画までチェックした上で判断します。

ただし、もっと簡単に、もう少し大枠で捉えて、設備投資のバランスを見る方法があります。

それが財務分析の中の「安全性」の指標のひとつである「固定長期適合率」です。

この固定長期適合率を使って、設備投資が適正であるのか、経営判断をすることができます。

※この記事は次の人にオススメです。

設備投資をしても良いか、悩んでいる人

設備投資の可否について、判断基準を作りたい人

固定長期適合率で何を見るか

まず、計算式から見ていきましょう。

算式:固定資産÷(純資産+固定負債)

つまり、固定資産の購入費用を純資産と固定負債の合計額で賄えているかということです。

過去の利益の蓄積(=純資産)と長期の借入金(=固定負債)で、設備投資にかかる費用を賄えていれば、安全性は高いと言えます。

この固定長期適合率は、既に過大投資になっていないか、もしくは、この投資をすると過大投資にならないか、という設備投資の適正範囲を教えてくれます。

目標は80%以内です。

仮に、純資産+固定負債が1億円であれば、固定資産は8000万円以内ということになります。

医療法人の一般病院ですと、病床数にもよりますが、おおよそ70%〜80%くらいのようです。

全業種平均では85%と言われていますので、医療機関は設備投資が多い産業ですが、財務上のバランスは比較的良い状態と言えます。

気をつけるケース

固定長期適合率を計算した上で、100%を超えるようだと要注意です。

「この設備投資をしたと仮定すると、固定長期適合率が100%を超えてしまう・・・。」ということであれば、一旦手を止めて、購入金額や借入金のバランスを再検討する必要があります。

100%を超えている状態とは、純資産と固定負債の合計以上の設備投資をしていることを意味し、同時に、短期借入金などの流動負債が設備投資に回っていることを意味します。

短期借入金は設備投資ではなく、運転資金のために使いたいものです。

設備投資に使ってしまうと、運転資金が厳しくなってしまいますので、100%を超えることがないように注意してください。

まとめ

今回は設備投資に対する判断基準のひとつとして、固定長期適合率を解説していきました。

最終決定にはキャッシュフロー計算書等を使う必要がありますが、病院やクリニックの「設備投資のバランス」を見るには、手軽でオススメです。

固定長期適合率の推移を見ていると、設備投資が利益に還元されていくお金の流れがよく見えます。

そして、その利益を使って、再び設備投資をしていく・・・というサイクルを繰り返します。

設備投資は非常に大きなお金が出ていくことになりますので、こうした財務分析を有効に使いながら、適切な経営判断ができるようになりたいですね。