分院長には使用人兼務役員として給与を払う!Q166
こんにちは。
「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。
分院の管理者である「分院長先生」は、医療法人の理事である必要があります。
つまり、理事=役員となりますので、役員報酬という扱いになります。
ご存知のとおり、役員報酬は様々な制約があり、なかなか不都合です。
勤務医時代のように、残業手当や賞与を支給するわけにはいかなくなります。
基本的に昇給は年1回、毎月同じ金額(定期同額給与)、賞与を出そうにも一定期間内に事前に届出を出しておいて、さらに届出とおりの支給日と金額にしろ(事前確定届出給与)、、、。
これを理事長先生のご本人のみならず、分院長先生にも適用するのは実務上、困難なケースもあります。(分院長先生は身内ではありませんので)
「分院長にも残業代とかインセンティブとか出したいんだよね」
こう仰る理事長先生も多くいらっしゃいます。
そこで、分院長先生に役員報酬のみならず、使用人として通常の給与を支給することができれば、万事解決です。
この医療法人では馴染みの薄い「使用人兼務役員」というルールについて、解説していきます。
※この記事は次の人にオススメです。
・分院をお持ちの理事長先生
病院やクリニックにおける使用人兼務役員とは
役員でありながら、常時使用人としての地位や職務に従事している人が該当します。
分院長先生はまさにこのパターンです。
余談ですが、株式会社(中小企業)では役員が経理部長や総務部長と兼任、支店長と兼任などよくある話です。
逆に、副理事長や専務理事など使用人部分がない役員は対象になりません。
また、理事長先生の配偶者である役員も原則対象になりません。
こうして該当範囲は限られますが、この分院長の「使用人としての労務の対価部分」については、役員報酬としての規制を受けず、「給与」として経費にすることができるわけです。
分院長先生の給与をいくらにするか
ここで論点となるのが、「使用人としての労務の対価部分」はいくらなのかということです。
役員部分ではなく、使用人部分を多くした方が自由度が高そうですが、そうはいきません。
①使用人としての職務と似た職務の人と同じ基準
→常勤医師がいれば、その人が基準となります。
②分院長先生以外に非常勤医師しかいない場合
→似た職務がいませんので地域相場となります。
③地域相場も取りづらい場合
→分院長就任前の給与にベースアップを考慮した金額
こうして見ていくと、あくまでも「他の使用人」が基準となることが分かると思います。
その他の留意点
社員総会等で役員報酬の支給限度額を議決する際には、使用人部分を含めないようにしましょう。
また、使用人部分に対する賞与を支給する際には、他の職員さんと同じ支給時期にしましょう。
今回は「分院長先生」に絞って解説してきました。
実務上はあまりないものの、事務長や総務部長・看護部長などでも役員となっていれば、対象になり得ます。
ぜひ、分院長先生の頑張りに対し、「税法のせいで応えることができない」ということがないように、税法を上手に使っていきましょう!