事業承継税制は医療法人に使えるのかQ208
こんにちは。
「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。
突然ですが、医療法人に事業承継税制は使えるのでしょうか。
答えは使えません。
持分ありはそもそも当分の間続くとされているだけで、この承継税制を使ってまで、続けさせる対象になっていません。
持分なし医療法人はそもそも持分がないので、承継となる物がなく、関係ありません。
それではなぜ解説していくかというと、意外とご自身がオーナーを務める株式会社の株をお持ちの先生がいらっしゃるためです。
そこまで深堀はしませんが、この制度の申請期限が迫っていますので、適用の可否のご判断の参考になればと思います。
※この記事は次の先生にオススメです
・株式会社の株主である先生
贈与税の納税猶予とは
事業承継をしていく上で、問題となるのが承継していく株です。
贈与すれば贈与税が、相続すれば相続税が課税されます。
そこでこの制度を活用して、贈与時にかかる贈与税を猶予してもらい、先代の死亡時にその贈与税は免除されると同時に、相続税の納税猶予に切り替わり、さらに一定事由が生じた際にその相続税も免除されるという流れになります。
長期間に及びますね・・。
上記、一定事由とは主に下記の通りとなります。
①後継者がさらに次の後継者(=3代目)に株を贈与して、その3代目がこの事業承継税制の適用を受けた場合
②後継者(2代目)に相続が発生した場合
つまり、可能な限り事業を承継する場合に限るということです。
裏を返せば、M&Aなどで対象株式を譲渡してしまうと、事業承継していないわけですから、この納税猶予は取消になってしまいます。
また、解散してしまった場合や後継者が代表者を退任した場合(5年間)なども同様です。
事業を承継したことを辞めてしまったとみなされてしまうからです。
どう活用するか
先行き不安な世の中で、3代目まで見据えて事業承継税制を活用すべきか、判断できるでしょうか。
M&Aによる株の譲渡も納税猶予の取消事由です。
(取り消されて生じた税額と利子税をM&Aの売却代金で納税する形もあるかもしれませんが・・。)
ただ、主たる事業の変更は問題ありません。(資産運用会社等への変更は不可)
現在の事業の将来性に不安があっても、新しい事業に活路を見出すことはできますが、
後継者達をこの事業承継税制に縛り付けることになるかもしれません。
判断期限
この事業承継税制の適用を受けるためには、令和8年3月31日までに都道府県庁へ「特例承継計画」というものを提出する必要がありますので、そこまでが判断期間になります。
事業承継は日本の社会の大きな課題になりますので、もろもろ拡充される可能性もありますが、
先送りせずに今しっかり検討しておきたいですね!