超簡単!病院やクリニックの事業計画や経営計画の立て方〜目標利益〜
最終更新日:2020年5月18日 全体像をわかりやすくするために、Q 61と合体し、再編成しました。(時期は執筆時当時)
こんにちは。
「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。
「いくら利益を出さないといけないのか、わからない」
「来期の目標を立てたい」
こうした事業計画や経営計画に関するご相談もよくいただきます。
ということは、目標が明確になっていない、もしくは、明確にしたいとお考えの先生が多いということです。
11月現在、4月スタートの医療法人は、もう年間の3/4が経過しようとしていますね。
個人開業医の先生だと、残り1ヶ月ちょっとです。
今期の業績はどう推移していますでしょうか?
来期の見通しはいかがでしょうか。
そこで、今回は病院やクリニックの事業計画や経営計画を作る際に役立つ来期の「目標利益」や「目標収益」の考え方について解説していきます。
※この記事は次の人にオススメです。
・来期の目標利益や目標収益を立て、前向きに経営をしていきたい人
・事業計画や経営計画を立てることで、経営に対する不安感をなくしたい人
根拠の作り方
まずは、「目標利益」の方から見ていきましょう。
クリニックの場合は、先生お一人の中で目標利益がある場合もありますが、病院の場合には、幹部の皆様を中心に共有することになります。
その場合に大事なことは、きちんとした数字に基づく根拠があることです。
トップの夢や希望だけを押し付けても、周りの人たちはついてきません。
そこで、次の4ステップで考えていくと、説明できる合理的な利益となります。
(1)最低限、再来期へ持ち越したい利益を設定する
(2)借入金の返済金額(年間)
(3)設備投資の予定額(年間)
(4)上記(1)〜(3)の合計金額を70%で割り戻す
この金額が、目標利益となります。
4つのステップ
「(1)」だけは恣意性が残りますので、ご注意ください。
ここが、無理のある数字だと、ゴールの「(4)の目標利益」も無理のある利益となります。
前期が赤字であったのであれば、ごく小さい数字にし、とりあえず、黒字を目指すということでも良いかもしれません。
また、前期の利益をベースに定期昇給分を上乗せする等々、様々な考え方がありますが、共通して言えるのは「説明できる」金額にするということです。
ここをゼロで計算すると、最低限の目標利益(±0で着地する利益)を計算することもでき、現場の意識を高めることもできます。
この(1)に、「(2)借入金の年間返済金額」と「(3)設備投資の予定額」を合計した金額が必要となりますが、税金を納付した後の金額がこの金額になる必要があるため、30%は税金とみなし、70%で割り戻します。
【このブロックのまとめ】
来期の目標利益は、再来期へ繰越すべき最低限の利益から逆算して考えます。
実際には、減価償却費も返済原資にできますので、この目標利益は減価償却費計上前の利益で良いことになりますが、少し余裕を持たせる意味でも、減価償却費は考慮しないで考えた方が良いかもしれません。
あくまでも、目標利益とは各種財務諸表や資金繰り計画表を見ながら厳密に計算するものですが、こうして簡便的に計算することができますし、何より「説明しやすい(=根拠として提示しやすい)」というメリットがあります。
来期の事業計画の第1歩として、活用してみてはいかがでしょうか。
目標となる医業収益はどう求める?
それでは、その目標となる医業利益の元になる「目標としての医業収益」についてはどう考えたら良いでしょうか?
基本的には、目標となる医業利益に必要なコストを加算していくだけで、目標となる医業収益を立てることができます。
求めた目標利益に、次の3ステップを加算します。
(1)人件費を加算
(2)人件費以外の固定費を加算
(3)これらの合計を粗利率で割り戻す
これだけで、目標となる医業収益は求めることができます。
粗利率で割り戻す理由とは
まず、人件費は前期をベースに、当期の見込み金額でOKです。
定期昇給分を加味すると共に、社会保険料も加わりますので、忘れないようにしてください。
そして、人件費以外の固定費を加算します。
固定費というくらいですが、毎期ほぼ固定された金額になっていると思います。
修繕などの臨時支出も考慮した方が良いのですが、非常に大きな設備投資等は全てを今期の利益で負担しようとはせず、内部の蓄積利益で補っても良いです。
最後に、これらの合計を粗利率で割り戻します。
粗利率とは、医業収益に占める医業総利益の割合のことで、医業収益から医業原価を引いて残った利益を医業総利益と言います。
医療機関の場合、医業原価は収入に対して20%くらいなので、医業原価率は20%くらいです。
ということは、自動的に粗利率は80%くらいとなります。
数式で表すと次のようになります。
・医業収益=医業総利益+医業原価
・粗利率+医業原価率=100%
医業原価率とは、医業収益に占める医業原価(=医薬品費や診療材料費)の割合のことですので、医業収益に比例する性質があります。
医業収益が増加すれば医薬品費や診療材料費も増加しますし、逆もまた然りです。
医業原価は変動する費用であるため、人件費やその他の固定費のように単純に加算するのではなく、医業収益に連動させる必要があるため、粗利率で割り戻すのです。
まとめ
目標となる医業利益から、「目標となる医業収益」を求めることはできましたでしょうか?
最後の粗利率で割り戻す考え方だけ難しかったかもしれませんが、結論ベースで押さえて頂ければOKです。
目標となる利益も収益も、どちらもきちんと説明できる根拠が大切です。
今回ご紹介した方法は、どちらも簡単にできる手軽な方法です。
ぜひ、実践してみてください!