概算で十分OK!納税見積の簡単な作り方

 

※最終更新日:2020年6月10日

こんにちは。

「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。

病院やクリニックの支出の中で、最大級の支出は何でしょうか?

それは、税金です。利益の約30%に相当します。

「お金がない」ということなったら、大変です。

早期に対策を取るには、早期に納税額を把握しなければなりません。

「税金って、期末間際にならないと分からないものじゃないの?」

そんな誤解はないでしょうか。

そこで、今回は「納税見積の簡単な作り方」をお伝えします。

※この記事は次の人にオススメです。

納税見積を作るメリットをしっかり押さえたい人

納税見積の作成方法や考え方を知りたい人

早めに納税見積を作ることで、納得のいく決算を迎えたい人

始まりは決算予測から

税金は、利益に税率をかけて計算するイメージです。

ということは、まずは「利益」が決まらなければ、話は始まりません。

Q 67「簡単にできる!決算予測の3つの作り方」では、決算予測の作成方法を解説していきました。

まずは、このQ67を参考に、決算予測を作成し、最終予想利益(税引前)を計算してみましょう。

そして、その最終予想利益に30%をかけてみてください。

例:最終予想利益1億円×30%=納税額3000万円

一般の株式会社の場合は35%で計算したりしますが、医療法人は事業税が非課税ということもあり、30%で見ておけば十分です。

逆に、中小病院で最終予想利益が800万円程度であった場合は、25%でも大丈夫です。

中小病院に対する法人税は、800万円までの利益に対して、15%しかかかりません。その他地方税を加えても、25%でOKです。

確認しておくべき注意点

決算予測で最終利益が見込めていれば、納税見積の完成はすぐそこです。

ただし、注意点もありますので気をつけましょう。

(1)利益を所得に直す

(2)中間納税があれば、残りを納税

(3)繰越欠損金があれば控除

ポイントは所得の考え方

唯一の難関は、上記「(1)利益を所得に直す」かもしれません。

税金は「利益」に税率をかけて計算するイメージとお伝えしましたが、会計上の「利益」ではなく、税務上の「所得」に税率をかけて計算します。

「利益」も「所得」も要するに、「もうけ」ということですが、会計と税法で考え方に若干違いがあります。

なぜなら、正しい期間損益を計算したい会計と、税金を負担する力を知りたい税法で目的が違うからです。

つまり、「会計では費用になるけど、税法では経費にならない」みたいな話があるのです。

それにより、「利益」と「所得」には差が生じることになります。

とは言え、実務上、医療法人の場合、毎期それ程大きな差が生じるというものはありません。

そのまま、会計上の「税引前当期純利益」を使って、納税見積を作成しても問題ないケースも多いとは思います。

ただし、当期のみならず、前期以前の「利益」と「所得」の差を今期調整しなければならない場合もあります。

この部分だけでも専門家にご確認いただくと、より精度の高い納税見積が作れると思います。

中間申告の取り扱いを忘れないように

法人税には、中間申告という制度があります。

期首から6ヶ月を経過した日から2ヶ月以内に、中間申告をして、予定納税額を納めます。

例えば、4月〜3月を事業年度とする医療法人であれば、11月末までということになります。

予定納税額は、下記の算式で計算します。

算式:前期分の法人税額×6/前期の月数=予定納税額

要するに、「前期分の法人税額の半分」ということになります。

ただし、予定納税額が10万円以下であれば、中間申告は不要です。

この中間申告で納めた税金を、納税見積金額から控除することを忘れないでください。

例えば、年間の納税見積金額が200万円と見込まれたとしても、予定納税を120万円したのであれば、今回の納税は残りの80万円ということになります。

単純な話ですが、すでに納税した金額の控除を忘れないようにしてください。

繰越欠損金の控除も忘れがち

最後の注意点は、「繰越欠損金の控除」を忘れないようにしてください。

繰越欠損金とは、ざっくり言うと「過去の赤字のこと」です。

前期以前10年間に生じた赤字は、当期の所得計算上、控除することができます。

逆を言えば、当期の赤字は翌期以降10年間にわたり、毎期の所得金額から控除していくことができます。

例えば、今期1億円の所得が出たとします。

そこに繰越欠損金が2000万円あったら、当期は8000万円の所得金額となります。

その8000万円に税率をかけて、税金計算することになりますので、当然、1億円を元に計算したときよりも税額は少なくなります。

納税見積が出来上がったと思っても、あわててはいけません。この繰越欠損金がないか、必ず確認するようにしましょう。

ちなみに、大法人は原則として所得金額の50%までしか、控除することはできません。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

医療法人の場合、上記(1)で大きな差が出ることはあまりないのですが、差が出た時には、納税見積の結果が大きく変わってしまうことになります。

この部分だけでも、専門家のチェックをもらうようにしても良いと思います。

決算予測まで作ってしまえば、納税見積の作成はすぐにできます。

ただし、今回ご紹介した3つの注意点には気をつけてください。

大事なことは、「早めの見積」「早めの対策」です。

ぜひ、万全の体制で決算を迎えるようにしてください。