医師の個人財産を不動産管理会社へ移して節税する!
こんにちは。
「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。
相続税の節税対策は進んでいますでしょうか。
「法人を作って、個人資産を移しているよ」
ここまでしている先生は、ほとんどいらっしゃいません。
個人の財産を切り離して法人へ移すことで、個人財産ではなくなるわけですから、相続税の課税対象から外れることになります。
個人財産の多い医師にとっては、魅力的な相続税の節税対策となります。
そこで今回は、法人へ個人財産を移して相続税の節税対策とする方法について考えていきましょう。
※この記事は次の人にオススメです。
・相続税の節税対策について知りたい人
・不動産管理会社に興味のある人
不動産管理会社のメリットとは
そのメリットは、毎年の所得税に関するものと将来の相続税に関するものとに分けて考えることができます。
自己所有よりも節税効果の高い賃貸不動産について、検討していきます。
(1)所得税
賃貸不動産であれば、毎年不動産所得が発生し、確定申告していたと思います。
それが法人所有になることにより、法人の所得となるため、個人としては課税されなくなります。
もちろん、法人に対して法人税が課税されるわけですが、所得税よりもずっと低い税率になります。
(引退されて役員報酬がないなど個人所得がない先生は、逆に高くなる可能性がありますのでご注意ください)
(2)相続税
賃貸不動産から生じる毎年の収入がなくなることで、その積み重ねとして相続財産も減ることになります。
結果として、相続税の対策にもなるわけです。
不動産管理会社へ移った財産の行末は
それでは、法人へ移った財産はどうなるのでしょうか。
確かに直接所有する財産は無くなりましたが、法人の「株式」として所有することになります。
この先生が持つことになる法人の「株式」は当然個人で所有する財産となるため、相続税の課税対象になります。
「不動産が株式に変わっただけで、意味がないね」
こう思われるかもしれませんが、評価方法が違うため、大きな意味があります。
土地については路線価にて、建物については固定資産税評価額が評価方法の起点になります。
それに対して、株式は「純資産価額」や「類似業種比準価額」の併用によって評価します。
難しい専門用語になってしまいますが、ざっくり言うと「会社の資産から負債を引いた純資産」に対して課税されます。
つまり、会社が赤字であれば評価額をグッと抑えることができるわけです。
そしてこの評価額が低いうちに、「株式」を子供や孫へ贈与しておけば相続税負担を考慮せず、次世代へ資産を移していくことができるわけです。
それでは、評価を抑えることができる仕組みを具体的な数字で見ていきましょう。
まず、不動産は購入することで固定資産税評価額となります。
1億円の現金は1億円の評価ですが、固定資産税評価額であれば6割程度(6,000万円)になります。
さらに、賃貸不動産は3年経過※することで4割程度(4,000万円)になります。
※3年以内は通常の取引価格(時価)
借入はここまで減りませんので、会社としての純資産は「資産4,000万円−負債1億円弱」という債務超過になり、結果として評価額を抑えることできるわけです。
不動産管理会社のデメリットとは
メリットだけではありませんので、デメリット(リスク)も一緒に確認していきましょう。
(1)移転することに伴う税金
まず、譲渡に関する所得税がかかる可能性があります。
売却収入から取得費を引いて、もうけが出れば課税されます。
第3者ではないため売却金額を自由に決めたくなりますが、固定資産税評価額など合理的な金額である必要があります。
また、不動産を取得することになるため、不動産取得税や登録免許税も課税されます。
(2)年金に対する影響
法人である以上、社会保険の適用事業所となります。
その役員も社会保険加入となりますが、役員報酬の金額によっては一定額の受給停止等年金の受給にも影響してきます。
(3)相続が近い場合
法人へ不動産を譲渡しても、相続開始前3年以内であれば、時価評価となります。
その結果、不動産評価が相続税評価額とならなくなり、狙った評価差額によるメリットが得られなくなります。
相続税の節税対策のひとつ
相続税対策には様々な方法があります。
今回ご紹介した方法も、法人として毎期決算申告する必要があるなど、「管理が面倒だ」という方もいらっしゃいます。
大事なことはご自身の財産や相続人の状況はもちろん、価値観や性格等まで含めて最善の方法を検討することだと思います。
そのためには、税理士と深い信頼関係を築くことがとても重要になります。
まずは、信頼できるパートナーを探すことから始めてみてはいかがでしょうか!