3月決算法人である医療法人の改正点とは~その2~Q204

 

こんにちは。

「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。

医療法人の中で最も多い決算月が3月となります。

そして、新しい改正点もそのほとんどが3月決算法人から適用となります。

そこで今回も前回に続きまして、令和6年4月1日~令和7年3月31日までの事業年度から適用になる改正点から「その2」として、賃上げ促進税制の改正について解説していきます。

※中小企業向けの税制を前提

この決算が最初の適用となりますが、4月決算以降の先生も順次適用となりますので、ご自身のこととしてお読みください。

※この記事は次の人にオススメです

・3月決算である医療法人の先生

賃上げ促進税制も改正点があるので要注意

人件費が増えた場合の「賃上げ促進税制」は、既に馴染みのあるものかと思います。

人的産業である医療機関には、必ず適用していきたい税制ですね。

改正点を見ていきましょう。

(1)教育訓練費

前年度比10%以上から5%以上でOKになりました。

緩和されたということです。

ただし、給与等の支給総額の0.05%以上という前年度比だけではない当該事業年度の給与等とのバランスを見る基準が設けられました。

これは、これまで前年度比だけだったため、極端な話、教育訓練費1,000円を1,100円にすれば、前年度比10%以上という基準をクリアすることができました。

これでは、職員様のスキルアップという当初の目的から外れたものになってしまうため、給与等支給総額との比率も設けられました。

例:給与等支給総額1億円の医療法人の場合→5万円以上

それほど高いラインではありませんが、冒頭のような1,000円・・・という医療法人は注意が必要です。

また、人員の多い大きな医療法人の先生は逆にこの金額基準がかなり高いものになります。

そのため、これまでのようにいかなくなるケースもあると思います。

(2)くるみんとえるぼし

子育て支援や女性活躍といった基準である「くるみんとえるぼし」も一定ランク以上の取得で、この賃上げ促進税制が+5%控除できるようになりました。

これまで最大40%だったものが、45%となりました。

ただ、実務上はこのくるみんとえるぼしの一定以上の取得には、二の足を踏んでいる先生が多い印象です。

世間的にも認知度が上がる必要があるかもしれません。

赤字でも申告書の作成が必要になった

賃上げ促進税制は税額控除と言って、税金を控除してくれる話です。

そのため、給与が高騰していても、赤字の医療法人には関係ありませんでした。

税金が発生していないからです。

そこで今回、控除しきれなかった金額を翌期以降5年間、発生した税金から繰り越して控除することができるようになりました。

つまり、「本当は控除できる金額があったけど、税金なかったから関係ないや」という状態から、「翌期以降の税金から控除できる」という状態になりました。

特に、病院は黒字と赤字を繰り返しているような医療法人も多いですので、これは嬉しい改正かと思います。

反対に、毎期黒字のクリニックなどには、影響のない話になります。

注意点が2つありますので、押さえておきましょう。

(1)控除できず、繰り越した金額については、その控除したい事業年度において、前年度よりも給与等支給額が増えている必要があります。

→そもそも給与等が減少した事業年度では適用できないということです

(2)控除できず、繰り越した金額が発生したその事業年度において、税務申告書に明細書の添付が必要となります。

→いくら繰り越したのかという計算根拠の提示が必要ということです

つまり、控除できなかった事業年度においても、それを控除したい事業年度においても、要件があるということになりますので、漏れのないようにしっかり注意して、適用を受けていきましょう!

ちなみに個人開業医の先生は「令和7年分」の事業所得から対象となります。

同じく、しっかり適用を受けて、税金を控除していきましょう!