医師のための上手な生前贈与の進め方とはQ 184(前編)
こんにちは。
「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。
2023年度の税制改正によって、生前贈与の改正が入ったことはご存知の先生も多いと思います。
相続税を抑えるために生前に贈与をしても、相続で財産を取得した相続人に対しては、直前3年間分の贈与が無効化されるというルールが7年に変わったというものです。
もともとは「駆け込み禁止」で3年とされていたのですが、7年になりましたので「計画的な生前贈与」すら、制限された印象があります。
こうした改正により生前贈与に関するご相談が増えておりますので、今回は医師のための上手な生前贈与について解説していきます。
※この記事は次の人にオススメです
・医療法人の理事長先生及び個人事業主である院長先生
23年度改正の振り返り
(1)暦年課税
2024年以降、足し戻し期間が1年ずつ伸びていきます。
相続発生日ベースで言うと下記のように区分できます。
「意外と先だな」という印象かもしれません。
①2028年相続発生→27年・26年・25年・24年(加算4年間)
②2029年相続発生→28年・27年・26年・25年・24年(加算5年間)
③2030年相続発生→29年・28年・27年・26年・25年・24年(加算6年間)
④2031年相続発生→30年・29年・28年・27年・26年・25年・24年(加算7年間)・・・最大7年間の上限に到達
(2)相続時精算課税制度
毎年110万円の非課税枠ができました。
しかも、暦年贈与と違い、相続の際に足し戻しになりません。(=無効化しない)
足し戻しになるのは、従来通り、2500万円の累計非課税枠を超えた部分のみです。
適用を受ける上でのポイント
(1)暦年課税の長所
上記を見る限り、相続時精算課税制度の方が魅力的に見えたかもしれません。
ただし、暦年課税での足し戻しの対象は「相続または遺贈によって財産を取得した人」のみとなります。
つまり、孫のように法定相続人にならず、相続時の財産を取得しなければ、足し戻しの対象にはなりません。
生前贈与のみで完結します。
(2)併用することもできる
暦年課税と相続時精算課税は、贈与者ごとの判定となります。
つまり、父からは暦年課税で贈与を受け、母からは相続時精算課税で贈与を受けることも可能です。
その場合には、非課税枠は110万円×2で220万円となります。
(3)改正によって延長した部分
暦年贈与が3年→7年に伸びたわけですが、その伸びた部分については総額で100万円まで加算されないというルールも新設されています。
ただ、生前贈与の金額が小さい方は良いのでしょうが、先生方のように多額の生前贈与を行う方には焼け石に水ともいえますので、メリットを感じることは少ないでしょう。
次回へ向けて
今回は前提となる生前贈与の方法を改正を中心に解説してきました。
次回の後編は、いよいよ上手な生前贈与を行う上でのポイント(目の付け所)について解説します。
併せて、ご確認ください!