個人開業医の寄付は少し違う!寄附で節税する
※最終更新日:2020年7月15日
前回Q 94要注意!寄付しても節税になるとは限らないでは、病院やクリニックなどの医療法人を前提に、「寄附」について解説してきました。
特に中小病院やクリニックについては限度額が狭く、全額経費にならないケースが多々ありました。
そこで、個人開業医の場合には、どのようになるのでしょうか。
「個人開業医だって、結構寄付しているよ」
そんな先生のために、確定申告が迫るこの時期、個人開業医が「寄付(=寄附)」した場合の節税効果について、解説していきます。
※この記事は次の人にオススメです。
・個人開業医として、または、医師個人として寄付をした場合の税務上の取り扱いが気になる人
・医療法人が寄付した場合との違いを併せて押さえておきたい人
まずは寄附先を区分する
前回の医療法人同様、まずは寄附先を区分します。
(1)事業遂行上、直接必要な寄附→必要経費になる
医院を経営する上で、避けては通れない寄附の場合です。
患者様を紹介してくれる医局や地元地域の町内会などに寄付することがあると思います。
ただし、実務上、事業に直接必要であることの証明が難しいケースもあり、税務調査で指摘されることもあります。
(2)特定寄附金→所得控除となる
特定寄附金とは、下記の寄附を指します。
①国や地方公共団体
②認定NPO法人
③特定公益増進法人
②と③については、医療法人の場合は別枠での扱いとなりました。(法人税の考え方)
しかし、個人開業医は①と同じ扱いとなります。(所得税の考え方)
足切額は小さく、限度額は広い
医療法人ほどではありませんが、多少の制限はあります。
算式:特定寄附金の合計額−2,000円=寄附金控除
(1)足切額
2,000円の足切額があります。あまりにも少額の寄付は寄附金控除の対象にはなりません。
仮に1口500円の寄付でも5口集まれば2,500円となり、2,500円−2,000円=500円が寄附金控除となります。
(2)限度額
特定寄附金の合計額は、合計所得金額の40%までになります。
ご自身の所得金額の40%に相当する金額を寄附されることはないでしょうから、実務上は気にしないで大丈夫です。
また、節税効果ですが、寄附金控除は「所得控除」の扱いです。
この寄附金控除に所得税の税率を掛けたものが、節税効果となります。
例:特定寄附金10万円で、所得税率40%の場合
10万円−2千円=9万8千円(寄附金控除)
9万8千円×40%=39,200円(節税効果)
最後に、注意点として添付書類を忘れないようにしましょう。
寄附をした領収書や寄附先の証明書等は必ず用意しましょう。
税額控除もある
特定寄附金のうち、②認定NPO法人③特定公益増進法人、政党等に対する寄附については、上記所得控除と税額控除の有利な方を選ぶことができます。
算式:(対象寄附金−2,000円)×40%=税額控除
・政党等に対する寄付の場合は×30%
・対象寄附金は合計所得金額の40%まで
・所得税の25%が控除の上限
有利な方を選ぶ基準は簡単です。
ご自身の所得税率が40%未満なら税額控除が、45%なら所得控除が有利になります。
住民税も節税になる
上記、特定寄附金のうち、都道府県や市区町村が条例で指定する先は寄附金の税額控除の対象になります。
足切額2,000円を超える部分について、都道府県指定であれば4%、市区町村指定であれば6%が税額控除されます。
この「税額控除」という点が、先程の所得税との大きいな違いです。
所得税は「所得控除」のため、寄附金控除×所得税の税率分が節税になります。
それに対し、住民税は寄附金の税額控除額そのものが節税になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
前回Q94要注意!寄付しても節税になるとは限らないでも解説したように、医療法人は限度額の考え方が複雑でした。
それに比べ、所得税の考え方は比較的シンプルです。
所得控除と税額控除は選択の仕方で有利不利が出る話ですので、専門家にご相談の上、有利な方を選択するようにしてください!