ケースバイケース!特別償却と税額控除の有利選択

 

※最終更新日:2020年7月15日

私は日々、医療専門税理士として、お客様である医療機関の節税対策を考えています。

そして、節税対策を進めていると、ゴールとして「特別償却」と「税額控除」を選択できるものがあります。

その場合、どちらを選べば良いのでしょうか。

その答えは、その時の状況によって異なります。

もちろん、最終ジャッジは我々にお任せください。

とはいえ、「特別償却」と「税額控除」の違いは知っておいた方が絶対良いと思います。

そこで今回は、「特別償却」と「税額控除」の選択について、有利な方を選ぶ考え方について解説して行きます。

※この記事は次の人にオススメです。

税制について有利な方を選べるようになりたい人

「特別償却」と「税額控除」の違いを押さえておきたい人

メリットとデメリット

特別償却と税額控除、その違いは何でしょうか。

(1)特別償却

資産の減価償却を早める効果があります。

例えば、600万円の資産を購入し、特別償却30%の場合→600万円×30%=180万円の特別の減価償却費を計上することができます。

当然、大きく節税することができます。

以前解説した「Q86中小企業経営強化税制」では、即時償却が選択可能でした。

即時償却とは、特別償却100%ということですから、上記例の600万円全額が特別の減価償却費になり、最大限の節税効果を得ることができます。

ここまでだと迷わず特別償却を選択したくなりますが、気をつけるべきポイントがひとつあります。

それは、あくまでも「減価償却を早めている」だけに過ぎないということです。

上記例の即時償却600万円を選択した場合には、初年度に600万円を計上できる代わりに、翌期以降計上できる減価償却費が残っていないことになります。

つまり、翌期以降の節税効果はありません。

(2)税額控除

それでは、税額控除はどうでしょうか。

同じく、Q86で解説した「中小企業経営強化税制」では税額控除7%(資本金3000万円以下であれば10%)を選択することもできます。

上記例の600万円(資本金3000万円以下)であれば、600万円×10%=60万円の税額控除を受けることができます。(=納税額から60万円減らす)

この税額控除のポイントは、「減価償却」には何ら影響しないということです。

例えば、6年で減価償却する資産である場合、600万円÷6年=100万円を毎期経費にしていくことになります。

初年度60万円の税金の控除の他に、初年度を含めた6年間、毎年100万円ずつ経費計上していきますので、節税効果も均一化されていきます。

節税効果まとめ

ここまでのお話ですと、「税額控除」一択のように思われるかもしれまん。

基本はそれでOKですが、「特別償却」にも選択すべきケースがあります。

1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 合計
即時償却 経費 600万円 0 0 0 0 600万円
税額(30%) 180万円 0 0 0 0 180万円
税額控除10% 経費 100万円 100万円 100万円 100万円 100万円 100万円 600万円
税額(30%) 30万円 30万円 30万円 30万円 30万円 30万円 180万円
税額控除 60万円 60万円

着目すべき点は2ヶ所あります。

(1)総合計

即時償却の場合、600万円の資産に対して、約30%節税になりますので、180万円節税になります。

税額控除10%の場合、60万円の節税+通常の減価償却で6年間かけて、600万円の30%で180万円が節税になります。

60万円+180万円=240万円が節税効果になりますので、即時償却や特別償却よりも有利になります。

(2)初年度

次は初年度に注目してみましょう。

即時償却は初年度600万円全額を経費計上しますので、600万円×30%=180万円の節税効果です。

対して、税額控除10%の場合、通常通りの減価償却を行いますので、100万円×30%=30万円。

メインとなる税額控除の60万円と合わせても90万円にしかならず、即時償却の方が有利になります。

何を最優先にするかで判断

つまり、何を優先するかで決まるということです。

総合計を見ていただいたように、基本的には「税額控除」を選んでいただければOKです。

ただし、設備投資した初年度は、資産の購入代金という大きなお金が出ていきます。

そこに税金も出るとダブルパンチとなりますので、「即時償却や特別償却」で衝撃を和らげるという考え方もできます。

①初年度の資金繰りを重視したい場合

②初年度大きな特別利益があった場合

③年税額自体が少なく、税額控除しきれない場合

④翌期以降の経営の見通しが悪い場合

こうした場合には、「即時償却や特別償却」を検討してみましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

節税対策のゴールとなる有利判定。

判断を間違えるとせっかくの節税対策の効果が薄れてしまいます。

専門家に相談の上、慎重に判断していきましょう!