出資持分の贈与に精算課税を使うケースとは?Q 172
こんにちは。
「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。
今回は前回に続いて、持分ありの医療法人の出資持分を贈与する方法について解説していきます。
前回は毎年少しずつ贈与していく「暦年贈与」という方法でした。
今回は別の方法である「相続時精算課税」という贈与の方法について解説します。
「暦年課税」よりマイナーな方法になりますが、医療法人の出資持分の贈与に使うべきケースはどんな時か、しっかり抑えておきましょう!
※この記事は次の人にオススメです
・持分ありの医療法人の理事長先生
・医療法人の持分を後継者に渡していきたい先生
相続時精算課税とは
時系列に沿って説明します。
1.60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子または孫へ贈与
2.贈与金額から2,500万円を控除して、控除しきれない金額は20%の課税
3.実際の相続時に上記2の贈与時の価額を加算して相続税を計算し、納めていた贈与税分は控除
その名のとおり、相続時の精算される制度ですので、メリットを感じづらいかもしれません。
医療法人の出資持分の贈与に使えるのか
ポイントは2つあります。
1.2,500万円まで贈与税がかからず、超えても20%で良い
前回の暦年贈与は110万円を超えるとすぐに課税され、大きな金額になると最大55%の税率で課税されていました。
その点では、2,500万円をまとめて贈与することができるメリットがあります。
2.将来の相続時に贈与時の価額で評価される
医療法人の出資持分は利益の蓄積に比例する傾向があるため、持分の評価額は上昇していく傾向があります。
その点では、評価が上がりきる前の贈与時の価額で固定できるということは、今後の評価上昇部分を移転できるといえます。
反対に、将来的に評価額を抑えることができても、贈与時の価額になってしまうため注意が必要です。
医療法人の出資持分の贈与に使いづらい最大のネックは
この精算課税制度の適用を受けると、前回解説した暦年贈与の110万円の非課税枠が使えなくなり、金額に関わらず、贈与税がかかることになります。
相続財産は医療法人の出資持分だけはありません。
今後の生前贈与に不安がよぎります。
精算課税の適用を受ける人は、例えば会社員が親からの資金援助で住宅を取得する時など、一時的にまとめた資金が必要な人が多い傾向があります。
先生方のような資産の多い方はこうしたメリットよりも、暦年贈与が使えないデメリットの方が大きくなる可能性が高いといえます。
持分ありの医療法人の先生でオススメはどんなタイプか
それでは、どのようなケースでメリットがあるでしょうか。
医療法人の出資持分の評価額がまだそれ程高くなく、かつ、持分を渡していく後継者が決まっている場合には、この制度のメリットを享受できる傾向が強いと思います。
持分ありの医療法人は既に新設できませんので、設立から相当期間経過しているわけですが、このコロナ禍等で持分の評価額が下がっていて、かつ、後継者が決まっている先生は検討の余地があると思います。
繰り返しになりますが、1度使うと暦年贈与に戻れませんので、顧問税理士にしっかり相談の上、適用を検討してください!
※前回の記事も併せてご確認ください
・Q 171「認定医療法人制度の締切迫る!持分贈与の2つの方法とは」