医療法人の出資持分の譲渡は値引きOKか?Q 180

 

こんにちは。

「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。

医療法人の事業承継について顧問税理士として伴走していますが、必ず「持分の評価」を行い、その対策を実行しています。

新規ご契約の顧問先様で時々あるのが、こういう状況です。

「持分の評価額が高くなりすぎて、動かせないよ」

贈与するにしても贈与税が、譲渡するにしても所得税が高額になり、もらった人・買った人がそのお金を出せないパターンです。

評価額を下げるというのが大前提になりますが、それでも間に合わない医療法人様が多々いらっしゃると思います。

「10億円の持分を息子(=後継者)に1億円で売ってあげようと思う」

後継者が出せる金額の範囲で、このように考える理事長先生もいらっしゃいます。

そこで今回はマニアックですが、「医療法人の持分の評価が高くなりすぎてしまった場合のディスカウント(値引き)」について解説していきます。

※この記事は次の先生にオススメです

・持分ありの医療法人の先生

譲渡対価は相続税評価額

医療法人の出資持分は「非上場株式」という財産になります。

この評価は「相続税評価額」となります。

結論から申しますが、個人間(先生と親族である後継者)においてこの金額よりも著しく低い金額で譲渡した場合、その差額には贈与税が課税されます。

冒頭の例で言えば、評価額10億円を1億円で譲渡したわけですから、9億円の贈与があったことになり、贈与税が4.8億円くらいかかります。

出資持分自体には換金性がないので、その納税資金は別に用意する必要があります。

10億円で買うよりは出ていくお金は少なくなりますが、非常に高額かつ別途納税資金の準備という問題があります。

問題は著しいのラインです。

専門家によって見解が分かれるところですが、「4分の3未満」という裁判例もあります。

ただ、なぜ4分の3未満なのかは明示されておらず、この基準で良いかの判断は難しいです。

ちなみに、M&Aのように、完全な他人の場合には合意した金額で良いという考え方もあります。

こうした持分を放棄する「認定医療法人制度」もありますが、このレベルになってしまうと「渡し方」で工夫していくしかありません。

◯評価額を抑えた上で一気に渡す

◯長期間かけて少しずつ渡していく

◯改正された相続時精算課税を使う など

やはり、上がりきる前に対策していくということが非常に大切になります。

早期の事業承継は経営者の責任として、後継者のためにも必須だと思います。

法人へ渡す場合は

余談ですが、個人間ではなく、理事長先生から法人へ渡す場合も形としてはあると思います。

法人相手だと上記の個人間とは少し異なり、評価額の計算方法※が変わります。

※小会社として評価(土地を時価評価など。純資産ベース。)

結果として、評価額自体が上がることが多いと思います。

そして、その評価額の1/2未満の対価で譲渡すると、評価額自体で譲渡があったものとして課税されます。

法人として医療法人の出資持分を取得しても社員にはなれませんので、退職時の払い戻し請求権がありません。

そのため、実務的には法人が取得するケースはほとんどありませんので、上記個人間の譲渡の際の価格設定だけ気をつけるようにしましょう。

事業承継は少しでも早い段階で対策を取るようにしてください!