医師の確定申告!株の取り扱いはここが間違える!
(最終更新日:2020年4月22日)
12月に入り、そろそろ確定申告のご相談(株・配当・外国株式)が増えてきています。
その中には、誤解されていることがたくさんあります。
そこで今回は、医師の確定申告に関するご相談の中から、配当の課税について有利な方法の選び方、外国株式の取り扱いなど株に関する誤解の多いポイントを解説していきます。
※この記事は次の人にオススメです!
・株式取引をしている先生
・株式に関する課税上の有利不利が知りたい人
・外国株式の取り扱い全般を確認したい人
改正により取り扱いが変わっています!
金融商品の課税について、平成28年1月1日以降、金融商品の課税の取り扱いが大きく変わっているのをご存知でしょうか?
平成27年以前に購入された方は、購入時と税制が変わっています。
(1)公社債の譲渡
改正前は非課税でしたが、今は公社債も株式等に含まれることになりました。
そのため、上場又は一般株式等として、申告分離課税となります。
※改正前に発行されたものを今譲渡した場合には、上場としての扱いになります。
(2)ゼロクーポン債の譲渡
改正前は総合課税でしたが、今は上場又は一般株式等として、申告分離課税となります。
※改正前に発行されたものを今譲渡した場合には、上場としての扱いになります。
配当にも有利不利がある
上場株式等を保有していることにより、配当を受けることがあると思います。
その上場株式等の配当については、3パターンの課税方法があり、有利なものを選択することができます。
3パターンそれぞれの特徴を見ていきましょう。
(1)申告分離課税
上場株式の譲渡損と損益通算できます。これがメリットです。
ただし、配当控除の適用はありません。
(2)申告不要
源泉徴収のみで完結し、申告しないこともできます。
税金自体は徴収されていますので、わざわざ申告しないで済むというメリットがあります。
結果として、合計所得金額に含まれません。
(3)総合課税
配当控除の適用を受けることができることがメリットです。
配当金額の10%(課税総所得金額が1,000万円を超える場合は5%)を控除できます。
次に、合計所得金額について見ていきましょう。
これらの配当については、確定申告をすることで合計所得金額を構成することになります。
合計所得金額を構成すると、配偶者控除・配偶者特別控除、扶養控除・・・など、合計所得金額が少ない人向けの税制上のメリットを受けることができなくなる可能性があります。
これは、株式等を譲渡した時も同じです。
申告不要を選択することで、合計所得金額に含まれません。
ただし、申告した配当については、上場株式の譲渡損と損益通算した後の金額が合計所得金額となります。
大きな譲渡損があれば、相殺後となりますので、それ程心配いらないかもしれません。
なお、繰越控除については、控除前の金額になりますので、前年以前の大きな譲渡損を繰り越してきても関係ありません。
注意しましょう。
結論:(1)で損益通算を取るのか、(2)で合計所得金額から外すのか、(3)で配当控除を取るのか、税額が変わってきますので、最も有利なものを選択するようにしましょう。
課税所得金額ベースで言うと、下記のラインがひとつの目安になります。(復興税除く)
・所得税の課税所得金額900万円以下→総合課税で配当控除適用が有利(税率23%ー10%=13%)
・ 〃 900万円超→申告不要・申告分離課税が有利(税率15%)
・住民税申告不要・申告分離課税(5%)<総合課税(10%ー2.8%=7.2%) ∴申告不要・申告分離課税が有利
間違えやすい外国株式の取り扱い
日本経済の先行きから、外国株式への投資をされている先生も増えています。
基本的には、国内であれ国外であれ、上場していれば同じ取り扱いになります。
外国市場の上場されている株式は、国内同様、申告分離課税の対象になります。
税率も同じ所得税15%+住民税5%です。(別途復興税)
ただし、国内の証券業者等を経由しているか否かで、取り扱いが変わりますので注意が必要です。
税額控除・換算方法・配当金・譲渡損の4つの角度から見ていきましょう。
(1)税額控除
①外国税額控除
外国株式につき、外国所得税が徴収されていれば、日本の所得税と二重課税になりますので、外国税額控除の適用があります。
②配当控除
配当控除は配当をした法人側と受けた個人側の二重課税を防ぐものになりますので、外国法人からの配当については配当控除の適用はありません。
この2つの税額控除の対象的な適用の有無が、ポイントになります。
(2)換算方法
①配当金
配当金はTTBを用いて計算します。
②譲渡
為替差損益は譲渡損益に含めて計算します。
・取得時→TTS
・売却時→TTB
(3)外国株式の配当金
「国内の証券業者等を経由しているか否か」が判断の分かれ道です。
①国内の証券業者等を経由している
その配当金は日本株式と同様です。申告分離課税と総合課税、申告不要を選択することができます。
②経由せず、国外の支払者から直接受けている
申告分離課税と総合課税の適用を受けることはできますが、源泉徴収されておらず、申告不要を選択することができません。
申告分離課税の適用を受けたものについては、国内株式同様、国内の上場株式等の譲渡損との損益通算や繰越控除の適用を受けることができます。
(4)外国株式の譲渡損
こちらもやはり、「国内の証券業者等を経由しているか否か」が判断の分かれ道です。
①国内の証券業者等を経由している
まずは、他の上場株式等の譲渡益との相殺後、申告分離課税を選択した配当金と損益通算をすることができます。
それでも残った損失は、国内株式同様、3年間の繰越控除の適用があります。
②経由せず、国外の証券業者等との取引で生じたもの
源泉徴収されていないため、必ず確定申告が必要になります。
国内の上場株式等には該当しないため、申告分離を選択した配当金との損益通算はできませし、繰越控除の適用もありません。
非上場株式等と同じ取り扱いとなりますので、非上場株式等との譲渡益があれば、そこの通算は可能です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
確定申告は年に1度の話になります。
気がついたら、改正でルールが変わっていた・・・なんてことがよくあります。
特に株式の譲渡や配当については、計算方法の選択ミスで税額が変わってきます。
専門家に相談の上、最も有利な方法を選択し、ベストな確定申告を心掛けましょう!