医師の相続税対策〜借金しての不動産投資の落とし穴とは?〜
※最終更新日:2020年5月1日
よくある「借入して不動産を購入すれば、相続税対策になりますよ」という話。
本当にそうでしょうか?
大きな借金をして、その返済は相続人に任すという形で問題ないでしょうか?
不動産投資のリターンは長期間に及びます。そして、借入金は返さなければなりません。
節税になるという仕組みとその注意点について、解説していきます。
※この記事は次の方にオススメです。
・相続税対策として銀行借入をしようとしている人
・金融機関からこうした提案を受けている人
なぜ節税になるのか
なぜ、不動産投資をすると節税になるのか、それは相続税の評価方法に要因があります。
現金預金はその金額そのものが評価額となりますが、土地は路線価を基本とした評価額、建物は固定資産税評価額を基本とした評価額となります。
例えば、1億円の預金は1億円の評価ですが、1億円の土地は8000万円程度(約8割)、1億円の建物は5000万円程度(約5割)で評価されます。
そこを起点として、税計算がスタートするわけですから、当然、納税額も少なくなります。
さらに、その土地建物を貸すとどうなるでしょうか?
借りている人が存在するため、その借りている人の権利も存在します。
そのため、評価上は土地建物の評価額から借りている人の権利を控除した残りが評価額となるため、さらに納税額は下がります。
借地権割合などにもよりますが、1億円の土地は6000万円程度(約6割)に、1億円の建物は3500万円程度(35%)に下がるケースもあります。
最終的には、財産の評価額は約半分程度となり、不動産投資により納税額が大きく下がることは間違いありません。
出口に落とし穴
納税額を減らすという「入り口」には問題ありません。
問題が生じうるのが、その後の「出口」に向けてです。
まず、当然、借入金の返済をしなければなりません。
不動産収入から不動産経費を引いた「儲け」から返済していくことになりますが、収入・支出共に明るい見通しばかりではありません。
①収入・・・建物の劣化と共に、当然、入居率は下がります。
②支出・・・建物の劣化と共に、当然、修繕費などのメンテナンス費用が増加します。
つまり、「年々利幅は狭くなる」ということです。
不動産投資の利回りをシミュレーションする際には、収入は下がっていくもの、かつ、支出は増えていくものとして計算し、その残った利益から所得税と住民税の税金を控除し、さらに、借入金の返済までした残りが「真の利益(=キャッシュ残高)」となります。
この「真の利益」と投資額の関係を実質利回りと言います。
反対に、「賃料収入」と投資額の関係を表面利回りと言います。
表面利回りで判断するのではなく、実質利回りで判断することが大切です。
まとめ
10年・20年と経つと、入居率が下がり、修繕費などの支出が増え、さらに賃料も下げないといけないかもしれません。
実質利回りもマイナスに転じる可能性も十分あります。
入り口で得た不動産投資のメリットである「相続税の節税額」と比べて、どれくらい有利になるでしょうか?
もちろん、投資した物件や物件所在地にもよりますが、やはり、ある程度「減収・コスト増になる」というシミュレーションのもと、相続税対策として不動産投資をすべきか、慎重な判断をしたいですね。