医療法人や個人開業医が知っておくべき令和6年度税制改正とはQ 190
こんにちは。
「医療経営 中村税理士事務所」の中村祐介です。
昨年12月に税制改正の大綱が発表されました。
ニュースでよく話題になる「所得税3万円・住民税1万円」の定額減税など、たくさんの項目があります。
ただ、病院や診療所などの医療法人や個人開業医の先生方が知っておくべき項目は意外と少ないです。
それこそ、この定額減税や住宅ローン減税(子育て支援)などはニュースでの扱いが多いですが、所得制限があり、ほとんどの先生方が受けられません。
減税と名の付くもので、政策的な意図の強いものは、ほとんど所得制限があります。(かなり低い制限です・・。)
そこで今回は令和6年度税制改正の中から、医療法人や個人開業医の先生方(※大病院は除く)でも使えるものをピックアップして解説していきたいと思います。
※この記事は次の人にオススメです
・医療法人や個人開業医が使える節税策など令和6年度税制改正を知りたい先生
賃上げ促進税制の拡充
人的産業である医療機関において、おなじみの税制だと思います。
支払った給与総額が前事業年度より増加した場合の税金の控除です。
この制度を適用している先生はとても多いと思います。
大きく3点変わっています。
1.教育訓練費 前年度比5%増加+当期給与総額0.05%以上
これまでは前年度比10%以上増加でしたので、「緩和」されたように見えます。
ただし、当期給与総額0.05%以上という金額の絶対値の要件も追加されました。
従来は増加比10%以上だけでしたので、「今期は10,000円→翌期は11,000円」というようなミニマムな研修費でも上乗せ要件を満たすことができました。
国としては、職員様のスキルアップを図ってほしいのに、これでは高い効果を見込むことができません。
具体的な金額で見ていきましょう。
例:当期給与総額5,000万円の場合→教育訓練費25,000円以上/年
実際には、通常規模のクリニックであれば、それほど高額な教育訓練費となるわけではありませんので、心配する必要はないかと思います。
2.くるみん認定またはえるぼし2段回目認定で「控除率+5%」
子育てまたは女性活躍支援という観点から新設されました。
従来は増加した給与総額のMAX 40%の控除でしたが、この新設+5%でMAX 45%となりました。
こうした認定を受けることで、+5%を取りにいくのかという検討が必要になってきます。
この+5%がいくらになるのかは、各先生方によって違いますので、試算してみましょう。
3.繰越控除5年
従来は税額控除のため、そもそも税金が発生していないと無関係でした。
そして次の事業年度で税金が発生しても、再びその事業年度で給与増加の要件を満たす必要がありました。
「人件費は増えているものの、法人としては赤字」という場合には、何の恩恵もありませんでした。
特に一般事業会社に多いパターンです。
この繰越控除の新設によって、黒字の事業年度まで引っ張って、その控除を受けることができるようになりました。(ただし、その控除する事業年度においても、前事業年度より給与総額が増加していることが必要です。)
とはいえ、医療法人においては赤字のケースが少ないと思います。
黒字であれば、この繰越控除は関係ありません。
まとめ
毎年の税制改正は多岐に渡ります。
とはいえ、医療法人や個人開業医に関係ない項目もたくさんあります。
さらに所得要件で使えないものもありますので、適用できるものはしっかり適用を受けたいところです。
適用漏れは論外ですが、最大限の適用を受けることができるように、各種の適用要件をしっかり確認しておきましょう!